「半径5メートル」を知る

実は、先ほどから頻出する「合っているかどうか」というのは、この「社風・カラー」に合っているかどうか、を指しています。企業の方は、正解を知っているのですね。黄金タイプも、(就社ではなく)就職タイプも、会社に溶け込めず終わることが多い、それよりも、「合っている人を採るべき」なのだ、と。

実際、早期転職者のほとんどはそうなのです。

「ステージを変えたい」
「新たなチャレンジをしたい」

こんな、(よく、ビジネス誌などが盛んに煽る)上を目指すために転職する人などほとんどいません。確かに、表面的にそんなキレイごとで転職理由を飾る人はいるでしょう。ただ、こういうキレイごとは、転職先の企業でまず疑われます。なぜなら、「今度うちの会社に入ったとして、こちらがどんなに厚遇したって、彼らは、いつかポッと『ステージを変えるため』また転職してしまう」と不安になるからです。そこで、こんな「前向き理由」が転職希望者の口から出ると、つい私たちは深く突っ込んで、本当かどうか、を確かめてしまいます。

そうすると、けっこう簡単に、「前向き理由」の化けの皮がはがれ、ほんとの理由が顔をのぞかせる。

「給料が安すぎる」
「残業が多すぎる」

こうした、勤務条件・待遇などが次に出てくる人も多いでしょう。とすると、私たちは、こうたずねます。

「同じくらいの給料の会社は絶対いやですか? となると、紹介できる仕事は減ってしまいますが」
「最近は不況で人を減らしている企業が多いので、残業が少ないという条件だと、紹介できる企業は減ってしまいますが」

こんな話をすると、「給料が高いところ」「残業は少ないところ」にこだわる人はかなり減ります。それよりも、「給料のこと(残業のこと)は目をつぶっても、とにかく転職したいのです。お願いします」と言う人が圧倒的多数になるのです。

今度はその理由を突っ込んで聞いていきます。そして行き着くところは何か?

「上司との関係が悪い」「周囲に馴染めない」「環境や社風が合わない」……。

そう、ほとんどが風土や人間関係、それも、半径5メートル以内のごく小さな領域に問題の多くがある。

逆に、半径5メートルが良好なら、多少仕事がきつくても、給料が安くても、手に職がなかなかつかなくても、会社を辞める人というのは非常に少ない。

この半径5メートルの積み重ねが、「社風」であり「カラー」なのです。これらが自分に合っているかどうかが仕事選びの大きなポイントであると考える理由がご理解いただけたでしょうか。

※この連載では、プレジデント社の新刊『2社で迷ったらぜひ、5社落ちたら絶対読むべき就活本』から一部を抜粋して<全6回>でお届けします。

(澁谷高晴=撮影)