産経さえも「急ぐのは極めて危うい」と主張

産経新聞も10月25日付の社説(主張)で入国管理法改正案に対し、慎重な判断を安倍首相に求めている。安倍首相を支持する産経社説としては珍しい。

産経社説はまず「だが、日本の国の形を大きく変え得る政策転換だ。これまで認めてこなかった単純労働に道を開く。高度な試験に合格すれば家族の帯同を含む永住を可能にする。移民政策ではないといわれても納得することは難しい」と書く。

さらに「少子高齢化に伴う人手不足が背景にあるが、外国人の大規模受け入れに世論は分かれている」とも指摘した後、こう主張する。

「永住外国人については社会保障や家族の就労などの問題が必ず起こる。詳細な制度が詰め切れていない。野党はもとより自民党からも慎重論が出ている。法案提出ありきで急ぐのは極めて危うい」

沙鴎一歩も同感である。

安倍政権の緩みと驕りが見える

ところで各党の代表質問に対する安倍首相の答弁を聞いていると、長期政権の緩みや驕りが透けて見える。

たとえば立憲民主党代表の枝野幸男氏の代表質問(29日)に対する受け答えだ。枝野氏の改憲を巡る指摘には一切答えず、続く自民党筆頭副幹事長(総裁特別補佐)の稲田朋美氏の憲法9条に自衛隊を明記する改憲案についての質問には「首相としてこの場で答えることは差し控える」と言いながら「自民党総裁として一石を投じた考えの一端」として「命を賭して任務を遂行する隊員の正当性を明文化することは国防の根幹にかかわる」と強調していた。

野党議員の質問に真っ当に答えず、重用する与党議員の質問には雄弁に語る。しかも首相から総裁へと立場を変えて答弁する。いかがなものか。国会の代表質問の場である。あくまでも首相として答弁に立っていることを忘れてもらっては困る。

安倍首相の態度は慢心さにあふれ、謙虚さがない。そこを反省し、入国管理法改正も憲法改正も、私たち国民の懸念にしっかり答えられるようじっくり議論を重ねてほしい。

(写真=時事通信フォト)
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