金属加工業をはじめ、様々な業種の中小企業がひしめく新潟県三条市。ここに拠点を構えるマルナオは、仏壇彫刻師だった初代が創業し、大工道具を扱っていた。現在は一膳1万円超の箸など、高級小物木製品を製造・販売する。同社の事業展開を、中小企業経営理論が専門で、三条市に足しげく通う明治大学・森下正教授が分析する――。

高級小物木製品を製造・販売●マルナオ製品のショップ。本社工場に隣接し、主力の高級箸を販売。

技術という“芯”、各代で新事業に挑戦

福田隆宏現社長は創業者から数えて3代目ですが、同社の最大の特徴は、各代ごとに新しい事業分野にチャレンジしてきたことであり、かつ、そうでありながら、会社の歩みに一本の明確な芯が通っていることです。

初代の直悦氏は寺社・仏壇を装飾するための彫刻を生業とし、その後、2代目の時代には大工道具を扱う木工業を事業として本格化しています。

そして、10年前の2006年に就任したのが現社長。箸というまったく異なる製品分野に事業の舵を切って今日に至っています。

祖父・父・孫の3代。製造する品は変転しても、共通しているのは精密な木工技術を土台とした「モノづくり」です。コア技術を先代から受け継ぎながら、各世代が新分野を切り拓いてきているのです。

2代目が主力とした大工道具は、墨坪車(材木に墨で直線を引くための糸を延ばしたり巻き取ったりする道具)や千枚通しなど、まさにプロ向けの利器工匠具。つくりに妥協は許されません。そこには彫刻師としての初代の技術が生かされています。

しかし時代は移り、木造住宅の減少で大工の世界は衰退します。現社長が東京の就職先から帰郷して家業に携わり始めた00年前後、売り上げの99%を占めていた大工道具は、時代から取り残されつつありました。

そこで3代目・隆宏氏が打ち出した方向転換先が、箸の分野でした。

ここにも初代以来の精密木工技術はしっかり生かされています。黒檀、紫檀といった硬い木を扱うノウハウは、食べやすい箸先への精密研磨加工と密接に繋がっているのです。木工技術という芯がしっかり通っているからこその新分野開拓といえます。