今からできる対策「妻の資産は使わず、相続税を減らす」

多くの世帯では、夫が亡くなると、年金の収入が半分~6割程度になることが予想されます。2人から1人になっても光熱費・食費などの生活費はそれなりにかかります。引っ越しをしない限り家賃は変わりません。家計がやや苦しくなることは確かです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/taka4332)

そこで、「今からできる対策」のその1です。

60歳以降の夫婦は、なるべく夫だけの収入で生活し、妻の収入分はなるべく貯めておきましょう。夫の資産から優先的に使うことで、相続税を減らせる可能性もあります。

「今からできる対策」のその2は、「妻の年金を満額に近づけること」です。

年金の受給額は、年金を納めた期間によって、増減します。会社員の厚生年金保険料は、給料から天引きされるため未納期間はありませんが、自営業やフリーランスは自分で保険料を納める必要があります。人によっては未納の期間があるかもしれません。たとえば、会社を辞めたあと、保険料を支払わない期間があった、ということもあり得ます。

そこで、年金事務所に相談をする、もしくは毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」をチェックして、妻の加入期間をしっかり確認しておきましょう。

国民年金は加入40年で満額、厚生年金は70歳まで加入可能

年金の満額を受け取るには、加入期間が40年必要です(2018年の老齢基礎年金の満額は77万9300円/年)。加入期間が40年未満の人は、65歳まで国民年金に「任意加入」し、満額支給に近づけることができます。

「追納」や「後納」といった制度もあり、追納制度では過去10年以内の免除期間について、後納制度では過去5年の未納分を納めることが可能です。

また、厚生年金には70歳まで加入することができます。

企業に勤めることができるのであれば、60歳以降も働き続けることで(加入し続けることで)、厚生年金の部分の受給額は増えます。もちろん、これは夫にもあてはまる話で、夫の厚生年金が増えれば、その75%である遺族厚生年金も増えます。

65歳からできる対策 年金の「繰り下げ受給」が有力

65歳以降の対策としては、妻の年金の「繰り下げ受給」が有力になります。年金は本来、65歳から受け取り始めますが、「繰り下げ受給」といって、66歳から70歳の希望する時点に、受給開始を遅らせることができます(※5)

※5:遺族年金や障害年金、厚生年金保険などによる年金を受給していると、繰り下げることができない場合があります。

受給開始を1カ月遅らせるごとに、金額は0.7%増え、上限の70歳まで遅らせると、42%もの増額になります。増額した年金額は生涯続きます。70歳まで遅らせた場合の損益分岐点は、81歳10カ月。それ以降、長生きすればするほど得をするということです。

女性の平均寿命が87.26歳であることを考えると、夫の年金などで生活ができそうであれば、受給開始を遅らせたほうが良さそうです。