国とは異なり知事・市長など地方自治体の長には、行政行為に対して個人責任を問われるというリスクがある。リスクを承知でGOサインを出す基準とは何か。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月4日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

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自治体トップの判断に影響する「住民訴訟」の巨大プレッシャー

今回の台風によって亡くなられた方にはお悔やみを、被害にあわれた方にはお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧、復興を願っております。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Loco3)

僕がこれまでの慣例を打ち破り、新しい政策や行動をとろうとするとき、必ず役所から言われたのが「訴訟リスクがあります」という忠告だった。

訴訟リスク……それは住民訴訟を起こされるリスクのことで、地方の政治にのみ存在する制度だ。地方の知事、市長は、政策で支出した予算が後から違法だと認定された場合には「個人で」返還しなければならない。首相や大臣にはこのような責任はないんだよね。もし国政においても住民訴訟のような制度があれば、森友学園、加計学園問題で、安倍さんは確実に数十億円の訴えを起こされていたね。このようなプレッシャーがないから、国政には緊張感がない。

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この住民訴訟制度は、ほんときつかったよ。

訴訟を起こすのは、基本的には自由。だから、「橋下のこの政策・行動は違法だ。それに税金を使ったのは許せない。橋下個人のカネで返還しろ」と主張することはいくらでもできる。

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裁判を起こされて、大阪府庁や大阪市役所が訴えられるだけでなく、僕個人も被告にされたり、大阪府庁や大阪市役所が負けることによって僕が不利益を被ることを避けるために補助参加人としてその裁判に参加したりすると、それは全て個人で裁判を負担しなければならないんだよね。

弁護士を雇うなら弁護士費用は全て個人で負担しなければならない。そして裁判で負ければ、自分のお金で返還。しかも大阪府庁や大阪市役所という巨大な役所が一回で支出する金額なんて、少なくても数百万円。数億円なんていうのもざら。

となると、住民訴訟の裁判で負ければ、まあ普通は一発で個人破産になるよね。