人事考課にかわる機能別の方法

人事考課を存続させているものは、それが「必要悪だから」という認識だ。しかし、ごく少数ながら、批判者たちが勧めていることを忠実に実行している企業もある。人事考課の機能を切り離し、それぞれにふさわしい方法を編み出しているのだ。実例を紹介しよう。

●フィードバック

人事考課の目的のひとつは、社員がミスから学んだり、自分の強みを伸ばしたりできるよう、フィードバックを与えることだ。しかし、人事考課では年に1、2度しかフィードバックが与えられない。しかも、上司(もしくは人事部)から一方的に言い渡される形となり、内容はもっぱら個人に着目したもので、人事資料に記録され、場合によっては昇給に直結する。そのためこのシステムは、社員にはうわべを取り繕うインセンティブを、心優しいマネジャーにはミスを見逃すインセンティブを12分に与えることになる。

人事考課を廃止した企業は、フィードバックに関して別の方法をとっている。ソフトウエア会社のSASインスティテュートは、各部署が独自のフィードバック手順を設計することを奨励しているが、少なくとも月1回は社員とマネジャーの間でなんらかの話し合いをするよう求めている。これは評価とはまったく別物で、本人が求めないかぎり人事資料には何も記録されない。

●実績給

多くの企業が、昇給を決める根拠と昇給について社員と話し合う場の両方を提供しているが、これは理想の組み合わせではない。金銭が議題に乗せられた瞬間、他のことはすべて重要性が低下するからだ。さらに悪いことに、評価と給与は相関しない可能性がある。『ネイションズ・ビジネス』誌では、ある人事専門家が次のように指摘している。「人事考課に基づいて昇給が決められ、しかも昇給が厳しく抑制されているとしたら、それはあなたの人事考課がすばらしく高くなることはありえない、ということにほかならない」。

デミングの信奉者を筆頭に、パフォーマンス評価の批判者たちは、実績給自体を批判する傾向がある。そのため、評価を廃止した企業のほとんどが、昇給を決める手順も別個に編み出している。ゼネラル・モーターズのパワートレイン部門は、所定の給与等級の範囲内で社員の経験に基づいて昇給を決めている。特定の新しいスキルを習得した社員に昇給を与えている企業もある。SASは実績ベースの昇給制度をとってはいるが、昇給プロセスをフィードバック・システムとは切り離している。