「中国には気を付けろ」という父の遺言

こうした「依存と不信」の交錯する感情は、今日の北朝鮮にも受け継がれています。金委員長ら北朝鮮の首脳部は、柳成龍たちが味わった属国としての悲哀を思い起こし、中国を「千年の宿敵」と呼び、これを歴史の教訓としているのです。金委員長の父である金正日は、死の間際に「中国には気を付けろ」と言い残したそうです。

「中国憎し」の感情は、金委員長の「アメリカ抱き付き作戦」の背景にもなっています。中国とアメリカに二股外交を仕掛け、中国の後ろ盾を得つつ、アメリカを利用して中国の介入をコントロールするという絶妙なバランスを取ることに、北朝鮮は成功しています。

いずれにしても、金委員長ら北朝鮮の首脳部が真に意識しているのはアメリカではなく、中国です。習主席の恐ろしさと比べれば、「トランプなんてちょろいもの」と思っているでしょう。米朝首脳会談で金正恩とトランプが見せた親密ぶりから、北朝鮮への中国の影響力が弱まったと見る向きもありますが、実際にはそうではありません。ちなみに、韓国の文在寅大統領については、金委員長は「使いやすいコマ」くらいにしか見ていないでしょう。

中国外務省の耿爽(こう・そう)副報道局長は、3回めの中朝首脳会談を受け、「友好的な隣国として国際的な(北朝鮮への制裁)義務に違反しない前提で、正常な交流と協力を保持する」と表明しました。中国側は北朝鮮に対し、独自の支援をすることを示唆しており、もし、これが実行されれば、対北朝鮮制裁の包囲網は事実上、効果を失います。

北朝鮮は中国の支援を得る可能性が高まっています。ただし、いかに支援を受けたとしても、北朝鮮は中国に屈服する必要はありません。今やトランプ大統領が事実上の後見人になってくれているからです。こうした状況を作り上げることが、北朝鮮の本来の狙いだったのでしょう。