店頭情報を外科手術並みの精度で分析するテクノロジー

ダグ・スティーブンス(Doug Stephens)氏。

この新しい体験型モデルでは、小売業者が提供する体験、それによって動員される顧客数、売り上げへの効果について、定性化だけでなく、定量化も求められる。つまり、消費者の喜びや深い信頼をつかみどころのない曖昧な言葉で語るだけでは十分と言えない。体験志向の小売業者は、誰が来店し、一見客なのか常連客なのか、どの売り場に行って、何にどのくらいの時間、関心を寄せ、来店をきっかけにどのようなアクションを起こしたのかを把握しておく必要がある。買い物客の有無に加え、体験に対する反応も集計しておく必要がある。

さまざまなテクノロジーを味方につければ店舗と本部の双方で瞬間ごとの体験を全方位的に把握できる。これまでのように、セールやプロモーションの情報を客に送りつけるのではなく、今後は買い物客から有益な行動データや態度データを吸い上げる技術が多く使われるようになるはずだ。体験志向の小売業者は、現在の切れ味悪いツールではなく、こうした新しい技術を生かして、未来の小売スペースを外科手術並みの精度の高さで分析するようになる。たとえば、次のような技術がある。

▼顔認識技術 特定スペースの人の出入りやオーディエンスの人口動態特性を集計して可視化
▼ビーコン(位置情報)技術 消費者がどの情報を最も必要としていて、店内のどのカテゴリー、製品、展示から入手しているかを把握
▼感情追跡技術 店内のどの体験が、満足、退屈、不満、混乱といった買い物客の感情を生み出しているかピンポイントで特定
▼試着室用技術 試着中のブランドや製品、サイズ、スタイルを特定し、ビッグデータ分析を通じて商品推奨力を高め、予測型のカテゴリーバイイング分析に反映
▼対話型サイネージ(看板)とタグ付け技術 表示メッセージをカスタマイズできるだけでなく、買い物客の人口動態特性や購入実績に応じて提示価格まで変更可能
▼会員・加入者識別技術 店内での体験と、その後の携帯電話など他のチャネルからの購入行動との関連を特定
▼モバイルエンゲージメント技術(モバイル利用時の消費者との関係強化) 消費者が店内で商品をスキャンして、どのような情報を収集しているのか、その情報がその場での購入や潜在的な購入意欲にどのような影響をもたらしたかを明らかに
▼モバイル識別追跡技術 来店客の保有するスマートフォンなどの端末のブルートゥース信号を生かし、一見客か常連客かの区別のほか、平均滞在時間を特定
▼RFID(無線識別)技術 閲覧、操作、断念の回数が多い商品を確認
▼販売員による関与・顧客対応技術 買い物客から最も多く寄せられる問い合わせ、個々の買い物客の趣味や好みの変化をデータとして取り込んで分析反
▼動画分析技術 買い物客の店内回遊パターンを把握