内閣人事局というアメとムチ

17年2月の朝日新聞報道以来、森友疑惑は親安倍か、反安倍かの政治的対立を際立たせた。安倍政権は12年の政権復帰以降、特定秘密保護法や安全保障法制など国を二分するテーマを重要課題と位置づけ処理してきた。さらに戦後初めて憲法改正する具体的な政治日程に載せてみせた。

その構図に、歴史を重ねてみよう。官邸主導のトップダウンを進める政権に対し、佐川を筆頭に財務省、あるいは霞が関が抵抗したと考えることができる。官邸主権に対し各省の既得権益内で自由を求めた。財務省からの自殺者もまた、鶴ヶ城下よろしく野晒しにされたと言えなくもない。

今後行われる佐川の証人喚問でどれほどの真実が明らかになるか不透明だ。内閣人事局というアメとムチで、霞が関に忖度を迫ったという構図は確かにわかりやすい。ただ、書き換えをめぐる国土交通省からの報告が副総理の麻生太郎に伝わっていなかった経緯などから、増税をはじめ省益に反し続けた政権を葬ろうと目論んだ財務官僚の暴発、という見方も一定の説得力はあろう。

冒頭の安倍演説は、明治150年という節目にあたり、長州から会津、そしてすべての佐幕派に向けた、和解のメッセージと評価しうるものだった。

日本を取り巻く国際環境は、150年前も現在も厳しい。国内で無用なエネルギーを消費する余裕はない。国難に対し一丸となって取り組もう。安倍は、この演説にそんな思いを込めたのではないだろうか。

しかしその思いは、はかなく散った。燃え上がった森友政局は安定政権という外交上の強みはもちろん、安倍の総裁3選や悲願である改憲すら吹き飛ばしかねない状況だ。(文中敬称略)

(写真=時事通信フォト)
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