持ち家は相続時に、トラブルのもとになる

得なのは持ち家か、賃貸か。マネーの観点からよく語られるテーマだが、法律の観点ではどちらが有利だろうか。服部梢弁護士は、「相続トラブルになりやすいのは持ち家」と、賃貸に軍配を上げる。

「相続財産がほぼ持ち家しかないというケースは少なくありません。持ち家は現金のように簡単に分けられません。そのため相続人の間で揉める原因になりやすい」

持ち家を複数の相続人で分ける場合、まず考えられるのは「共有」だ。しかし、共有はトラブルを招きやすい。共有の不動産を賃貸に出すときは、持ち分の過半数の合意が必要で、リフォームや売却をするときは共有名義全員の合意が必要だからだ。

親兄弟と仲が良いから大丈夫と考えるのは甘い。

「たとえば共有している兄が亡くなれば、持ち分は義姉や甥、姪に相続されます。兄と仲が良くても、その相続人との関係が良好だとは限りませんし、所在不明で話し合いすらできないケースもあります」

代償額で折り合いがつかず、争いに発展

「共有」のほかには、売却して現金化してから分ける「換価分割」や、誰か1人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」という方法もある。

換価分割の問題は、すぐ買い手が見つかるとは限らないこと。その結果、「高く売れるまで待とう」「いや、相続税の納付で現金が必要。すぐ売ろう」と揉めることもある。

代償分割では、家を受け継いだ相続人が他の相続人に対して代償として金銭を支払うことになる。ただ、家を受け継いだ相続人が現金を用意できなかったり、代償額で折り合いがつかなかったりして争いに発展することがある。

このように持ち家を相続する場合はどのパターンでもトラブルになるおそれがあるが、相続財産が現金だけなら、これらのトラブルが起きる余地はない。