「古いものはダサい」はもう古い

インターネットが広く普及するまでは、コンテンツの発信源はマスメディアしかありませんでした。それゆえ、誰もがマスメディアの発信する最新のトレンドを追いかけ、それが友達とつながるための共通言語になっていました。

しかし、いつでも気軽にネットを使えるようになった今、そうした前提は崩壊しています。前述の「来来!キョンシーズ」が好きな小学4年生の男の子は、「古くてダサい」「古臭い」というネガティブなイメージは一切持っておらず、「昔からある動画で、面白いから何度も見ている」といいます。

(上)東方ファンの作った二次創作アニメをユーチューブで見る(下)銀河鉄道999のグッズを部屋に飾る

古いコンテンツであっても、それに初めて触れる子どもたちにとっては新鮮に感じるものです。またそれ以上に、タダ・ネイティブたちは最新の作品からとてつもなく古い作品までそろうネット上のデータベースに慣れ親しんでいるために、面白さに新旧は関係ないことを実感しているのでしょう。「古いものはダサい」という感覚が古いのです。

また、新しいか古いかだけでなく、公式か非公式かもあまり気にしません。東方Projectは、ユーチューブにあがっている二次創作作品をきっかけにファンになる子が多く、原作を知らずに二次創作作品だけを楽しんでいる子も多いそうです。

またある子は、アニメのテーマソングの替え歌動画ばかり見ているそうですが、原作のアニメが好きなわけではないといいます。タダ・ネイティブは、コンテンツを「自分にとって面白いか、面白くないか」という非常にフラットな視点で捉えているのです。

「昔からある商品」にも勝機あり

タダ・ネイティブたちは、余計な先入観をもたず、自らの感性で古いコンテンツに新しい価値を見つけ出すことが得意です。中学2年生の男の子は、昨年公開された映画『ゴーストバスターズ』のリブート作品で1959年型キャデラックを知り、あまりにカッコいいので試乗会で走っているところを撮影したと、自慢げに写真を見せてくれました。

このように、大人が「これは古いから、若い子には受け入れられないだろう」と思うものでも、現代を生きる子どもたちにとっては新鮮で魅力的に映るものがあるはずです。昔からあるコンテンツや商品も、子どもたちが自由な発想で楽しめる形で接点をつくることができれば、大人の想像もしなかった価値を生み出す可能性があるのではないでしょうか。

十河瑠璃(そごう・るり)
博報堂 生活総合研究所 研究員。2013年博報堂入社。博報堂DYホールディングス及び博報堂DYメディアパートナーズにて経理業務に従事し、2016年より現職。生活者の消費動向や子どもの意識・行動変化の分析に携わる。
 
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