価格変動より、税金面がネックか

さらに見過ごせない問題としては、ビットコインなど仮想通貨に対する税制があります。保有しているだけであれば、いくら値上がりしても問題ありません。しかし、日本円に換金したり、他の仮想通貨に乗り換えたり、物品を購入したりした場合には、所得税や住民税の課税対象となります。

課税対象となるのは「値上がり益」があった場合です。20万円を超える利益がある場合には「雑所得」として確定申告が必要です。

この申告はかなり面倒です。まず、ビットコインの取得価格を移動平均法と総平均法のいずれかの方法で確定させる必要があります。また換金や他の仮想通貨への乗り換え、物品購入をした時点の日本円価格を把握する必要があります。

ビックカメラのような小売業やネット通販など、買い物に使用できる店は拡大しています。例えば、ビックカメラで乾電池を買うのにビットコインで支払うことはできても、そのような細かい使用履歴から、利益額を全て計算しなければなりません。他の仮想通貨に乗り換えた場合にも、その都度の価格を把握する必要があるのです。

GMOグループの人たちは、税引き後の給与として支給されるので、保有しているだけなら申告は不要ですが、利用を考えると相応の準備が必要です。

社員が自由意思でビットコインでの給与支給を選択するのであれば、制度自体に問題はなさそうです。しかしGMOグループではビットコインの売買やレバレッジ取引のサービスを提供しています。会社が給与の一部として支払うのは、こうしたサービスを広げる目的があるのでしょう。社員の自由意思を徹底遵守してほしいと思います。ちなみに同社の基本姿勢は「革新的な取り組みにより、リスクを恐れず突き進む」だそうです。

一方、ビットコインが今後も順調な値動きを続けている限りにおいては、企業としての社会的責任を問う声も限定的でしょう。それが崩れるとすれば、大幅に値下がりして社員の不満が続出するか、逆に「値上がり益」が出ているにもかかわらず、税務申告を怠った社員が摘発されるようなケースではないでしょうか。

人事労務部門泣かせの制度であることは、間違いなさそうです。

(写真=iStock.com)
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