大阪弁が嫌いな乗客の方も大勢いるでしょう。たこ焼きやお好み焼きは、かなりの匂いを発するので、常識的に言えば機内食には向いていません。どちらも当然反対意見もあったはずですが、それをおしのけても「人格(キャラ)」を鮮明にすることを選んでいるのです。

実際には、たこ焼きやお好み焼きの匂いに対する苦情はほとんどなく、一人が買うと匂いにつられて、まわりでも売れていくそうです。

「アジアのかけ橋を目指す」という物語

ピーチの業績のよさの要因が、すべて企業としての「人格(キャラ)」を鮮明にしたことにあるなどと言うつもりはありません。またピーチの「人格(キャラ)」が嫌いという方も大勢いるでしょう。

ただ「人格(キャラ)」を鮮明にするということは、ある種のブランディングができているということです。

そもそも値段が高くても既存の航空会社を選ぶようなお客さんは、よほどの事情がない限りLCCには乗りません。だからその「人格(キャラ)」がみんなに好かれる必要はない。一部の人に強く好きになってもらうほうが重要なのです。

ピーチはその一部の人から強く好かれることに成功しています。

企業としての「人格(キャラ)」を鮮明にしたら、次は「未来のビジョン」を語りそこに向かっていく姿を示すことが重要になります。そうすることで「物語の主人公」になり、多くの人から応援してもらえる存在になれるからです。

実際、ピーチの自社サイトでは、代表取締役CEO井上慎一氏が、以下のようなビジョンを語っています。

Peachが目指すのは「アジアのかけ橋」。

手頃な航空運賃で誰もが気軽に移動できるようになることで、人と人とが出会い、そこから生まれる感動や笑顔で溢(あふ)れる世界をつくることが私たちの夢です。日帰り海外旅行を楽しむ大学生。毎週関西から札幌に帰省する単身赴任のお父さん。台北から沖縄のヘアサロンに通う台湾の女の子。遠くに住む恋人に頻繁に会いに行く遠距離恋愛中のカップル。今では空飛ぶ電車の世界が実現し、日本のみならずアジアの空に大きな変化が生まれています。(中略)

日本初のLCCとして、その手頃な運賃が注目されたPeachですが、私たちは価格競争のステージから一足先に抜け出します。「価格競争から価値創造へ」をキーワードに、今まで通り手頃な運賃を維持しつつも、航空会社の枠に捉われることのない取り組みで独自の体験価値を高め、成長著しいアジアの需要を開拓していきます。

Peachは「アジアのかけ橋」という夢の実現に向け、今後も歩みを進めていきます。

これからのPeachの物語に、どうぞご期待ください。