「沈黙の謀反」を起こす意識の高い若手社員

2年ほど前からストレスチェックが義務化され、また長時間残業問題も含めた働き方改革が叫ばれています。個々が目の前の仕事に閉じこもり、誰からも助けてもらえず、追い込まれていく状況はもう続けてはならないのです。

ところが、そこから抜け出せない企業が相変わらず多い。目の前の業績が下がる、人は増やせない、担当も代えられない。そういって、何も変えようとしない、正そうとしない。

この状況に耐え切れなくなった人、それを見ておかしいと思っている人が声を上げる。でも目の前の上司や経営者に進言しても、何も変わらないと思う。だから、外に向かって発信する、いたたまれない気持ちをつぶやく。これがきっかけで、違法残業や不適切な管理、不正が発覚していく。

声を上げずに見切りをつける社員も増えています。今までのやり方を変えられない、変えようとしない上司たち、経営者たちを見て、意識の高い若手社員は、「この会社に未来はない」と「沈黙の謀反」を起こして離れていきます。

突きつけられているのは、企業は何のために存在するのかということです。社員を幸せにできない会社が、存続していくことができるのでしょうか。働く人たちが心を押し殺して、耐え続けている会社からイノベーションが生まれるのでしょうか。改めて社員が主体的に動き出したくなる、そんな原動力を見出さなければなりません。

アブラハム・マズローの「欲求段階説」によれば、人は自分の安全が確保され、居場所が見つかり、そこで自分が認められるようになると、欠乏欲求から脱し、自己実現、すなわち成長欲求に向かうことができるといいます。

でも、その先に、もう1つ人の原動力となる欲求が存在します。それが自己超越欲求です。自分だけでは幸せになれない、周囲の人が、コミュニティ全体が幸せにならなければ自分も幸せにならない。働き方も雇用形態も価値観も異なる人たちがともに働く時代の中で、新たな原動力が求められているのです。