信じてはいけない外国人上司の「感謝」

【メーカー】裏切りに関しては、外資系のエグゼクティブクラスは何とも思っていません。一時期、米系外資と子会社の合弁企業に出向したことがあります。当初アメリカ人は副社長ぐらいしかいませんし、人事制度も日本の親会社とまったく同じというドメスティックな日本的経営をしていたのです。ところが2年後に完全に外資の支配下に入り、アメリカ本社から多数の外国人幹部がやってきました。日本人の社員はいったい自分たちはどうなるんだと戦々恐々でした。

ところが、アメリカ人のトップは「あなたがたの身分と給与はいままで通り保証します。安心して働いてください」と宣言。外国人上司もやさしいし、日本人社員も「なんだ、いいやつばかりじゃないか」とホッとしたものです。

ところが1年後に大規模な組織・人事制度改革の断行と、リストラが実施されました。それまでやさしかった外国人上司も「あなたに上司は必要ない」、つまりあなたをどこかに異動させて使っていく気はないと言われ、辞めさせられたのです。出向組の私は親会社に戻りましたし、同じ出向組の上司子飼いの部下も運良く引き取ってもらえましたが、そうじゃない社員は退職しましたね。

信用できないのは上司との「口約束」

【司会】外国人上司は日本人に比べてクールというイメージがあります。

【メーカー】外国人にとって部下に感謝することと、部下にやさしいこととはまったく別なのです。エグゼクティブクラスの中には平気で部下をtroops、兵隊とはっきり呼ぶことがあります。つまり兵隊が自分のために働いてくれれば、感謝の気持ちを表す半面、兵隊である以上、上司の命令に逆らうことを許さないという2つの面をはっきり使い分けています。つまり、命令通りに動いてくれれば感謝するが、逆らったり、期待した成果を出さないと厳しい処分を下すのです。日本的な公私を含めたウエットな関係はありません。

【ゼネコン】別に外国人に限りませんよ。じつはいまの会社は3社目ですが、最初の転職は失敗しています。転職時に上司の人事部長と約束を交わしたのです。私は「自分の成果は全部あなたに差し上げますので、上に昇進してください。その代わり私がいまの仕事で成果を出したら、人事制度改革をやらせてほしい」と言ったのです。私の仕事は社員500人のリストラとメンタル不調で休職している社員の処分といういわば汚れ仕事でした。苦労しましたが、結果的には実際に何の問題もなくやり遂げました。それもあってその後、人事部長は執行役員に昇格し、年収も倍になったのです。

当然、私は自分のやりたい仕事をやらせてもらえると思っていました。ところが部長は「君のリストラのやり方に労働組合が相当不満を持っている。辞めさせろ、とまで言っているぐらいだ。当分は静かにしていてくれないか」と言われ、約束を反故にされたのです。完全に裏切られたわけですが、このまま飼い殺しでは自分のキャリアにとって損だと思って転職したのです。いまでは約束を交わすときには口約束はしない、相手をしっかりと見極めることを心がけています。

【司会】いつどこで自分の身に災いが降りかかってくるかもしれないというのが会社という組織。用心するだけでは避けられませんし、リスクヘッジできる方法を常に考えておく必要がありますね。

(撮影=市来朋久)
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