具体的に説明しましょう。睡眠には、深い眠りであるノンレム睡眠と、浅い眠りであるレム睡眠があることはよく知られています。ノンレム睡眠のときは、全身のあらゆる部位でメンテナンスが行われます。痛んだ筋肉の修復や血流停滞の解消が行われるのも、この時間帯。つまりノンレム睡眠は肉体的疲労を回復する睡眠です。

一方、レム睡眠のときは脳が活動を続けて記憶の整理を行っています。起きている間に処理しきれなかった悩みは、この時間帯に脳が整理を試みます。レム睡眠は、いわば心と脳の疲れを取るための睡眠です。ノンレム睡眠とレム睡眠は交互に訪れますが、どちらが欠けてもダメ。両方が揃って体、心、脳が回復するのです。

1日の計画はどこから立てるか

では、どのような睡眠を取れば、仕事でいいパフォーマンスを発揮できるのでしょうか。まず考えていただきたいのが、睡眠の位置づけです。ビジネスパーソンの多くは、睡眠を1日頑張ったことに対するご褒美の1つとしてとらえています。「今日はたくさん頑張って疲れたから、ゆっくり寝よう」というわけです。

一方、一流のビジネスパーソンは違います。彼らにとって、睡眠は投資。「明日はこういう仕事があるから、快眠していいパフォーマンスを発揮しよう」と未来志向で考えます。睡眠をご褒美としてとらえているのか、投資としてとらえているのか。それは1日のスケジュールを書いてもらうとわかります。

ご褒美だと考えている人は起床から1日を組み立てますが、投資と考えている人は前夜の就寝から1日を考えます。翌日に最高のパフォーマンスを発揮するためにどう眠ればいいのかを考えるのが、成果を出すビジネスパーソンの思考なのです。

なぜ短い時間でも疲れが取れるのか

睡眠が仕事への投資だからといって、とにかくたくさん眠ればいいと考えるのは早計です。最適な睡眠時間は人によって異なります。

ナポレオンは3時間のショートスリーパーで、アインシュタインは10時間のロングスリーパーでした。睡眠は究極の個人習慣であり、何時間眠るべきという「べき論」で語っても意味がありません。むしろ意識したいのは睡眠の質です。

布団に入って横になっている時間に対して実際に眠っている時間の割合を「睡眠効率」といい、一般の人が目指すべき合格ラインは85%以上といわれています。一流の人たちは睡眠効率が非常に高く、睡眠時間が短くても快眠して疲れを取り除いています。日中に集中力を発揮できるのも、質の高い睡眠をしているからです。