――タイムフリーにしろシェア機能にしろ、聴取のきっかけを増やす狙いがあるということですね。

【青木】シェア機能の、お勧めしたい時点の音声をシェアできる仕組みには、すごくこだわりました。放送局からしてみると、「一番おいしい大トロの部分を取られてしまう」というような意識もあったかもしれないですが、まずは大トロでプロモーションしないといけない。せっかくのラジオを聴いてもらえるチャンスに、まずは「この瞬間、一番脂が乗ったおいしい大トロ」を聴いてもらったほうが効果あるはずです。

――ラジコで取得している「聴かれ方」のデータは、放送局にフィードバックしているのでしょうか?

【青木】もちろんしています。放送局にとっては、ものすごく参考になるデータだと思います。ラジコは1分ごとに、ライブでデータを取得することができます。管理システムを放送局に提供していますので、スタジオで番組を生放送しながら、「現在、何人が聴いているのか」なんてこともわかってしまう。

ラジオの聴取率調査はアンケート方式ですし、2カ月に一度しか調査を行いません。その点、ラジコはほぼリアルタイムでデータを取得できるので、例えば「どのコーナーが人気か」を実感することもできます。

――試験的にNHKのラジオをラジコで配信するという報道も出ていますね。

【青木】過去6年間、NHK・民放連共同ラジオキャンペーンを年1回やっていて、7 回目となる本年度は、現在そうした内容を前向きに検討中です。NHKとラジコが一緒になることで、ユーザーの利便性は高まりますし、キャンペーン自体のPRもしやすくなりますね。

目指すは“オーディオプラットフォーム”

――今後、ラジコが目指す方向性は、どのようなものなのでしょうか?

NHKラジオは「らじる★らじる」というオリジナルアプリで配信を行っている

【青木】将来的には「オーディオプラットフォーム」を目指すべきと思っています。「ラジオプラットフォーム」ではなく、「オーディオプラットフォーム」とあえて掲げているのは、音声コンテンツはラジオだけではないからです。もちろん、ラジオが中心です。でも、音楽だって音声ですよね。権利さえクリアできれば、1年前のラジオだって聴けるようになるかもしれない。「ラジコにアクセスすれば、いろいろな音声が楽しめる」といった感じになればいいと思っています。

タイムフリーにしても、有料で全国のラジオ局を放送エリア外でも聴くことができるエリアフリー(14年4月から実施)にしても、“聴き方”についての間口は広げていきました。しかし機能性でいうと、ほかのショッピングやグルメサイトにあるような「レコメンド機能」がまだありません。A局を聴いているリスナーに、好みそうな番組であればB局の番組でも勧めていく。さまざまなアプリと可処分時間を取り合う戦場の中では、必要なことだと思っています。