「めっき」というと、24金コーティングなど美観を目的とした「装飾めっき」を一般的には想像しがちだが、昨今ではめっき被膜そのものの特性を利用して製品に機能を付与する「機能めっき」の技術が我々の生活に欠かせなくなっている。

福井県の清川メッキ工業は、驚異的な精巧さで世界にその名が知られるトップランナーだ。ミクロな技術でビッグスケールのビジネスを展開する一方、「海外進出しない」と、あくまでも地元・福井に根を張る社風も個性的である。昨今、積極的に世界進出を「グローバル化」の名の下で試みる企業が多いのに、なぜ清川メッキ工業はあえて「ローカル」で居続けようとするのか。中沢孝夫福山大学経済学部教授が解説する。

清川メッキ工業 代表取締役社長 清川肇氏。「均質」な製品を「量産」。それこそが「開発」と自負

<清川メッキ工業>
本社所在地●福井県福井市 従業員数267名(正社員256名、パート社員11名)
社長●清川肇(1964年生まれ、2代目。工学博士。富士通を経て92年入社)
沿革●1963年、現会長の清川忠が創業。ミクロを超えるナノ・テクノロジーの表面処理加工技術で、携帯電話、デジタルカメラ、人工衛星など、最先端IT産業の発展に貢献。

ものづくりの肝はプロセスにある

「ナノめっき」の技術なくして現代の生活は成り立ちません。なぜなら、スマートフォンをはじめ、私たちを取り囲むエレクトロニクス商品に使われている半導体や各種電子部品の機能、性能と精度を守り、各部品の接続・連携を支えているのは、「ナノ」や「マイクロ」を単位とするめっきの技術だからです。

「ものづくり」というと、自動車やスマートフォン、あるいは伝統工芸など、消費者が手にする商品だけを連想しがちです。しかし「ものづくり」に従事する側にとって、肝はプロセスにあります。商品の企画・開発、つくるための生産設備の設計製造、各種の中間財(部品や素材)や中間財を加工する方法の開発、量産化への道。この一連のプロセスを「滞りなく行う」ことは、言葉でいうほどたやすいことではないからです。

例えば、スマホには800~900種類の部品を組み込まれています。タッチパネル、液晶パネル、各種半導体、プリント基板、電気を蓄える積層セラミックコンデンサー。多くは大きさや厚みが0.1ミリ、0.2ミリで、当然その素材もまた微細。その微細な「部品や素材」をつくるプロセスはさらに超微細で、困難を極めます。

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