日本を支える優良な中小企業を、識者が詳しく紹介していく新連載「発掘!中小企業の星」。第1回は、公衆電話の部品を製造する町工場から出発し、現在は製造航空・宇宙分野に進出している「株式会社由紀精密」を取り上げ、その成長の秘密を、経営学の視点から解説します。

日本の中小企業の数は430万社、全企業の99.7%にのぼります。本連載「発掘!中小企業の星」では、毎回各界の識者が、日本を支える中小企業で、特徴をもって伸長する優良企業を詳しく紹介していきます。

初回で取り上げるのは、神奈川県茅ケ崎市にある「由紀精密」。元々は公衆電話の部品をつくる町工場でしたが、3代目の大坪正人氏が社長に就任した後、航空・宇宙分野に進出。業績をV字回復させた企業です。取引先にJAXAや航空機メーカーが並ぶ、リアル「下町ロケット」企業は、なぜ飛躍的に成長できたのか? 以下、早稲田大学入山章栄准教授がポイントを解説します。

株式会社由紀精密の3代目、大坪正人社長

なぜ「第二創業」に成功できたのか?

いま私は日本各地で業績を飛躍的に伸ばしている「第二創業」企業に注目しています。第二創業とは「零細企業が、事業承継で若い後継者への代替わりを契機に、突然変異のようにビジネスを転換させ、業績を伸ばしている」ことを指します。なぜ代替わりで飛躍できたのか。その秘訣を経営学の視点から解説していきます。

第1回となる今回紹介するのは、神奈川県茅ケ崎市にある由紀精密です。茅ヶ崎の本社工場と新横浜にある研究開発センターと合わせて、従業員30人ほどの小さな会社です。主な事業領域は航空宇宙・先端医療領域。ジェットエンジンの主要部品や、超小型宇宙衛星の部品などを製造し、取引先には世界大手のジェットエンジン・航空機メーカー、JAXAなどが並びます。またシンガポールの企業と業務提携し、スペースデプリ(衛星軌道上を漂う宇宙ゴミ)を除去するプロジェクトにも挑戦。医療分野も業績を伸ばしています。2012年に経済産業省「中小企業IT経営力大賞優秀賞」を受賞し、世界が注目する小さなイノベーター企業です。

由紀精密は、もともとこのようなイノベーター企業ではありませんでした。2代目から3代目である大坪正人社長へ代替わりしたことによって、会社が劇的に生まれ変わった、まさに第二創業の典型例なのです。同社の事例は、事業承継を成功させ、第二創業を促すためのヒントが多く隠されています。

「発掘!中小企業の星」は、成長を続ける優良企業を取り上げて、その強さの秘密を各界の識者が解説する、雑誌『PRESIDENT』の連載記事です。プレジデントオンラインでは、本連載で紹介する注目の中小企業を募集します。

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