西川家のお金の使い方についても、いつも身分相応にしなければならないと文面にも残されています。倹約はもちろん、派手な生活をすることは当主にふさわしくないことだとされているのです。もともと近江は質素で堅実な風土です。「始末する」という言い方をするのですが、お金をかけるべきときはしっかりかけるが、意味のない無駄なことや虚栄のためにお金を使わない。それが近江商人の考え方なのです。

会社でいえば、社員の給料は誰からもらっているのかということです。買ってくださったお客様の一品一品から、ほんのちょっとずついただいているのです。自分だけの力で稼いでいると思い始めると派手になるし、どこかでつまずいてしまう。お客様が価値を感じていただいたお金を少しずつ集めたものが会社に集まり、それが自分の糧になる。ならば、常に謙虚に努力しなければならない。そうした考え方が西川家の基本となっているのです。

▼西川産業社是
・誠実
・親切
・共栄
▼近江商人道
・三方よし
・始末する(無駄遣いしない)
▼1807年の店則(現代訳)
一、国で定められた法令については、
全員が厳しく守ること。
並びに規即や規定についても
厳守すること。

一、社員はお互い仲良くし、
分に応じて麗しく仕事に励み、
商いのことは日頃から品物を良く吟味し、
薄口銭で売り捌き、
例え品不足となったときでも、
日頃に定められた値段で売り上げし、
決して余分の口銭を頂かないこと。
要するに、世間の皆々様が困るようなことは
一切行っては成らない。
西川産業社長 西川八一行
1967年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、住友銀行入行。海外勤務などを経て退職。95年に西川産業入社。2006年より現職。「布団はここ100年の事業。今後は予防医療や介護分野でも寝具の新たな価値を提案する」
 
(ジャーナリスト 國貞文隆=構成 堀 隆弘=撮影 西川産業(三ツ割銀預帳)=画像提供)
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