多くの有識者がほっかむりを決め込むなか、真摯な回答があった人物は中山俊宏慶應義塾大学教授だ。中山の博士論文には『米国共産党研究にみる政治的知識人エートスの変容』がある。彼は米国の政治思想に関する論文・ペーパーを発表してきており、TV番組でも引っ張りだこの「米国通有識者」で知られている。もちろん今回の大統領選挙についても積極的なコメントを行ってきた。しかし、トランプ失速の予測を外した結果、すでに今年1月の予備選段階で「再三トランプについて読みが外れた」旨を自身のTwitterで述べた。本取材にも「トランプの台頭を見誤った。アメリカ国民が彼を大統領として受け入れるとは思わなかった」「見誤ったことについては、そのことを真摯に受け止め、今後の研究に組み込んでいきたい」「予想といえるかどうかはわからないが、アメリカの政治情勢について、研究を深め、今後も発言していきたいと考えている」と反省の弁を述べている。

一方、中山と比べて反省の色がない態度を示した人物が藤原帰一東京大学大学院法学政治学研究科教授だ。藤原はフィリピン政治研究からスタートしたリベラル派の学者であり、近年メディアに盛んに登場する。今回の大統領選挙では、心理学まで交えながら最後までヒラリー勝利の予測を行い続けた。「私はクリントン氏が勝つ可能性が非常に高いと思います」(10月20日NHK)、「本日の『いま世界は』で申し上げたようにFBI長官の行動の前からクリントン候補の支持は下げていました。三度のテレビ討論会が終わった以上クリントンに焦点が当たるのは避けられず、焦点が当たると支持を下げてきました。それでもトランプ候補が逆転する可能性は乏しかった。いまでもその判断です」(11月6日、自身のTwitter)。これは藤原の発言の一例にすぎない。国費で運営される東京大学に所属する研究者という立場であり、自身の願望と予測を履き違えてきた責任は厳しく問われるべきだろう。

なぜ予測を外したか等の質問に対し、藤原は「申し訳ありません。時間がなく、まるで無理、です」とのみ回答し、質問への直接の言及を避けた。他メディアではトランプ当選に関する見解をダラダラと述べており、予測を外した責任を痛感しているヒマなどないということなのだろう。

(文中敬称略)