この「マクロ経済スライド」は、年金額が気づかないうちに目減りしていく“悪魔のしくみ”だ。

年金額は賃金・物価の変動に応じて決まるが、「マクロ経済スライド」では、このときに一定の調整率(現在は0.9%)を引いて年金額を計算する。たとえば賃金・物価が2%上昇しても、年金額は、0.9%を引いた1.1%しか上がらない。

現在のところ、賃金・物価の下落時にはこの調整を行わないとされている。だが、年金財政のさらなる悪化を受けて、政府は賃金・物価下落時にも調整率を差し引くマイナススライドを導入するのではないか。

さらに、年金支給開始を65歳から67歳に引き上げることも考えられる。次の年金改正は19年で、日本中の目がオリンピックに向いているはずだ。このタイミングが危ない。

では、どれくらいの減額を覚悟すべきか。現在40代の人なら、年金受給は67歳からと思ったほうがいいだろう。受給額も2割は下がると考えたい。現在、モデル世帯の年金額は月約22万円。ここから2割下がるとすれば、年金額は月17万~18万円程度だろう。

われわれは、今まで以上に努力して、年金不足に備える必要性に迫られている。毎年の積立額に応じて税金が安くなる確定拠出年金など、優遇税制を活用して、着実に老後資金を増やしていこう。

北村庄吾(きたむら・しょうご)

“年金博士”。社会保険労務士。1961年生まれ。中央大学法学部卒。法律系国家資格者の総合事務所ブレインコンサルティングオフィス代表。著書『定年前後のお金の手続き』など。
 
(有山典子=構成 永井 浩=撮影)
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