辞書はボロボロになるぐらい使い込んだ

【三宅】この対談では、ゲストの英語との出会いを語ってもらっています。佐藤先生の英語との出会いは、中学生からだったのでしょうか、それとももっと小さい頃でしたか。

【佐藤】小学校4年生の時、父がアメリカのカラフルないわゆるピクチャーディクショナリー本と薄い辞書、を買ってきてくれました。アルファベットに興味を持ったのはその時です。とにかく、とてもカラフルできれいだし、父に聞いたら「これはエー、ビー、シーと読むんだよ。日本語とはぜんぜん違う言葉なんだよ」って。そこにairplaneとか書いてあって、「アルファベット通り辞書を引くと飛行機のことだとわかるよね」と教えてくれました。それが英語との出会いです。とても薄い辞書なんですが、それが私の宝物になりました。中学校の3年間、英語学習は、その辞書1冊で通してしまったぐらいです。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

それ以外に、父の友人で英語とドイツ語がとても堪能な人がいて、よくうちに来ると英語で歌っていたんですね。そのリズムとかイントネーションが日本人とは違って、とても素敵でした。それも英語に憧れる原因になったかもしれません。

そして6年生になると、母が「中学校に入ると英語が科目に入ってくるのよ。あなた、少し準備のために習っておくといいかも」って言って、個人レッスンの先生をつけてくれました。そんな環境だったものですから、中学校へ進んだ際には、すんなりと英語の授業に入っていけました。周囲の人たちより、少しですが英語ができるという自信を持って取り組めたのはラッキーだったと思います。

私は、小学校時代は「好きな科目は?」と聞かれると「体育と音楽」と返事をしていたぐらいです(笑)。本当にそれしかありませんでした。そうしたら母が「中学校へ行くとね、小学校にはなかった、いろんな科目が増えるの。得意な科目ができるといいわね」と言うわけです。「困ったなあ、何もないなあ、体育と音楽しかないな。じゃ、英語を頑張ってみよう」ってその時に思えたんですね。実際、英語は好きになりました。

【三宅】英語で歌うことには誰しも憧れますよね。歌詞はどんなことを言っているのか、興味も湧きます。そこに、楽しく、易しい辞書があれば、自然と引いてみるはずです。いきなり、分厚い、文字の小さい辞書から引かされると、それだけで英語が嫌になってしまう。楽しく英語と出会えたというのは、とてもラッキーでしたね。

【佐藤】今、考えてみると、そう感じます。辞書はボロボロになるぐらい使い込みました。今、振り返れば収録されている単語は2000もなかったかもしれません。でも、それだからこそ、辞書を引くという習慣がしっかりと身についた気がします。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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