「いつも自分は損ばかりしている気がする」そんな人は、ここに挙げるような行動をしている自覚はないだろうか?

自分がわかりやすいかどうかで、投資先を決めてしまう

先日、投資家の方が集まるミーティングに参加したときのこと、ある女性がこんなことをおっしゃっていました。

「老後に備えて、資産運用を始めたいんです。まずFXからと思っているんです」。私が「なぜ株などではなく、FXなんですか?」とたずねると、「だって株って難しくてよくわからないから。ドルとかユーロなら私、知っていますもん。海外旅行に行くときに使っていますから」。

FXは通常、レバレッジをかけて行う為替取引で、資金の何倍もの金額をかける投機的側面を持っています。しかも、為替の動きを説明する理論はいくつもあって、プロでもその先を読むのは難しい。少なくとも「株式投資より簡単」ということはありえません。しかし、この女性のように気軽にFXを始める方は非常に多いようです。

こうした行動の背景には、「利用可能性ヒューリスティック」が関係しています。これは身近で見たり起こったりしたことは「起きる確率が高い」とか、「よく知っている」と勘違いして、物事の本質を見誤ってしまう行動のことをいいます。この女性は「ドルやユーロは使ったことがある」→「為替は身近」→「FXって何となく安心!」と心の錯覚を起こしているのです。

「わかる」のと「知っている」のとでは大きく違います。FXは価格変動のメカニズムや、取引の特徴をよく理解しないまま大金を投じると、一瞬にして多額の負債を抱えることになりかねません。

大江英樹
1952年、大阪府生まれ。野村証券で個人資産運用、企業年金制度のコンサルティングなどを手掛ける。2012年、オフィス・リベルタスを設立。行動経済学の研究からその問題点や解決法に切り込む講演・セミナーが人気を博している。『その損の9割は避けられる』『老後貧乏は避けられる』など著書多数。