ユーザー無視 仲間の業者を“勝手”に選べる

聞けば、介護業界には特定の事業者へのサービス利用が集中しないようにする規定もあるそうです。ひとつの事業者の利用は8割までで、それを超えると介護報酬が減算されるというもの。つまり、あるケアマネージャーが訪問介護のサービスを受けている10人を担当しているとすれば、8人まではひとつの事業者を選んでいいが、それ以上になるとペナルティを課すというわけです。

一応、制限はあります。ただ、8割というのはきわめて大きい。それらを牛耳っているのが、支援センターだとすれば……。ちょっと問題です。ユーザー目線に立つと、公正な競争が行われている業界とは言いがたいかもしれません。

もちろん、すべての支援センターが儲け至上主義ではありません。

「中立公正の原則を守り、利用者により良いサービス事業者を選ぶよう指導しているところもあります。そのうえで自社の事業の質を高める努力もしているような地域包括支援センターです」

つまり、支援センターには、利用者第一の良心的なところと、利用者よりも利益追求を優先するところがあるということです。そして最大の問題は、利用者がその良し悪しを選べないことでしょう。なぜなら、住んでいる場所によって担当する支援センターは決まってしまうからです。

では、もし地元の支援センターが利益追求型だった場合、より良い介護サービスを利用することはあきらめなければならないのでしょうか。

「まず、利用している事業者のサービスが満足できるレベルかどうかを、介護経験のある人の話を聞くなどしてチェックしてみてください。問題があるセンターが仲介した業者だって質が低いとは限りませんし、担当ケアマネが頑張って良い業者を選んでくれているかもしれませんから。大事なのは、そのサービスによって良い介護ができているか。その点で納得できればいいわけです。また、サービスに不満を感じている場合はケアマネに言えば業者を替えることができます。情報を集め、その過程で聞こえてくる評判の良い業者を指定すればいいわけです」

独特の構図をもつ業界ですが、利用者側が情報収集し主張することで、より良いサービスを受けることは可能なのです。

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