連日メディアを賑わす、人工知能(AI)。2045年にはAIが人類を超えると言われる。AI+画像認識技術を使い、来店者の行動を分析、小売店のマーケティングを自動的に行うサービスを提供するベンチャー企業が「ABEJA」だ。三越伊勢丹、ゲオ、東急グループなどがABEJAのサービスを導入し、成果を出している。

ABEJAの社長、岡田陽介氏は1988年名古屋生まれの28歳。小学校5年でコンピューターに興味を持ったという若きプログラマー社長は、どうやって「小売業に革命を起こす」のか? 田原総一朗氏と岡田陽介氏の対談、完全版を掲載します。

高校生の時、アラン・ケイの言葉に出合う

【田原】ABEJA(アベジャ)はディープラーニングを事業にしていますね。その話を聞く前に、まず岡田さんとコンピュータとの出合いから聞きましょうか。岡田さんは、“The best way to predict the future is to invent it”、つまり「未来を予測する最善の方法はそれを発明することだ」というアラン・ケイの言葉がお好きだそうですね。アラン・ケイといえば、パーソナルコンピュータの父と呼ばれる人物です。この言葉と出合ったのはいつですか。

【岡田】私がコンピュータサイエンスを初めて体系的に学んだのは高校生のころでした。そのときアラン・ケイを知って、彼のことをいろいろと調べていくうちに、この言葉を見つけました。当時の私はコンピュータでいろんなものをつくりたいという衝動が強かったので、この言葉を見てすごく興奮しましたね。

【田原】学問として学んだのが高校生のころだとすると、パソコンそのものと出合ったのはもっと前?

【岡田】小学校5年生のときでした。たしか最初は、小学校のコンピュータ室みたいなところで触ったんじゃなかったかな。インターネットは全世界につながっていると聞いて、当時の自分の価値観が逆転してしまったような衝撃を受けたことを覚えています。

【田原】インターネットは本当に革命的でした。

【岡田】そうですね。そこからコンピュータにハマって、プログラミングをやったり、コンピュータで絵を描き始めました。小中学生のときは遊び程度でしたが、高校生になってから本格的にのめりこんで、デザインのコンテストに応募して文部科学大臣賞をいただいたこともあります。

【田原】すごいですね。そのコンテストではどういうデザインをつくったのですか。

【岡田】コンテストの課題は、「明日の社会を見つめ、明日の世界を創造する」。テーマは抽象的で、私は、国連やユニセフといった国際機関が出している数値資料を、デザインの力で人が直感的に理解できるようにしようとしました。そこで考えたのは、国旗と花びらです。まず政治体制とか保健衛生といった項目を指標化して、そのレベルを色で表現して各国の国旗をつくりました。またそれらの項目が一定のレベルをクリアしたら大きくなる花びらをつくりました。さまざまな項目が高水準なら満開になって、その国の国民は幸せだとわかるというコンセプトです。

【田原】大学ではどんな勉強を?

【岡田】もともとデザインとコンピュータプログラミングを融合するところに興味を持っていたので、大学ではコンピュータグラフィックスを研究しました。学生時代は、新しい映像表現の技術をつくることに夢中になっていました。