現実を知る体験を若い頃から積ませる

現代ビジネスでも、創業者が息子や娘に事業継承を託すときは、新たな世代が直面する時代に応じる必要があります。「次の時代に、お前にしか達成できない目標がある」と教えるほうが「とにかく両親を真似よ!」というよりもよほど効果的なのです。

過去の自分と同じ目標を託すのではなく、若い者たちが輝きを増し、彼らが得意とする才能を発揮できる目標を与える、親がそれを許す必要がまずあるのです。

乱世を生き抜き、苦労を重ねることで帝国を創り上げた3人。彼らはいずれも常人では乗り越えることの難しい状況を乗り越え、最後に栄光を手にしています。偉大な父を持ちながら、のちの後継者たちは、ともすれば惰弱な者となり父の帝国を崩壊させています。これはなぜ起こってしまうのでしょうか。

理由の一つは、まさに親の成功にあります。名を成す前の英雄たちは、戦場で夜露をしのぎ、望むモノを手にすることなどほとんどできない一時期を過ごしています。ところが、成功したあとの彼らは、群臣が取り巻き、並みの人では要望できない生活を普通にできる立場になります。

英雄達を見ると、父が苦労した時期、実戦で戦い抜いていた時期から一緒に従軍していた世代は、たいていの場合質実剛健に育っており、成功を収めたあとの子供たちは、知識偏重で華美を好み、浪費を気にかけない者に育っています(あくまでも傾向として)。

成功した人物の子弟であれば、モノに豊かであるのは当然です。彼らは自らの立場や、裕福であること、あるいは両親から受け継いだ名声や才能を誇ることがあります。

しかし多くは最初からその家にあったものであり、自ら獲得したものではありません。そのため子供や後継者には、親の豊かさを自慢するよりも、現実の社会を体験できる場を多く持たせ、戦場の厳しさや人生の機微を早くから教える期待を持つべきなのです。

英雄や天才、偉才たちの家柄は、親の名声による七光りが確実にあります。そこで子供たちは、いつしかそれを我がモノのように振る舞い始めるのです。

そのような落とし穴を防ぐには、若い時から社会に参加させ、仕事の現場を見学させるなどの体験が、大きな効果を発揮します。英雄たちの多くは、年若い息子を連れて戦場を駆け巡りました。のちに振り返ってみると、それは財貨よりも多くのものを子供たちに残したのです。