「2・6・2」という法則があります。人間の集団の2割は優秀、6割が普通、2割は常にぱっとしない、というものです。

学校の遠足で例えれば、2割は放っておいてもどんどん歩く。6割は普通に歩く。でも2割は、蝶々を追いかけたり、花を摘みにいったりして遅れる。組織も同じです。

――全員が優秀ということはないのですね。

はい。そして不思議なことに、上の2割がいなくなったら、6割のなかから優秀な人が出てきてまた「2・6・2」になる。下の2割を取っても、サボる人が出てきて「2・6・2」になる。

真面目な上司ほど、「蝶を追いかけたりするのはけしからん」と、遅れた2割の人を指導することに注意がいってしまいがちです。そして、先頭の2割には「しばらく休んでおけ」などと言う。実はこれは最悪のパターンです。

――なぜ最悪なんですか?

こうした管理方法では組織が力を出し切れないからです。やる気がある2割には、どんどん仕事を与えればいい。「歩けるだけ歩いていいよ」と。そうしたら6割も「置いていかれる」と歩き出すのです。残る2割も不安になって動き出す。

これは、中国でかつて改革開放政策を推進した鄧小平の「先富論」と似ています。「豊かになれる人からなればいい。そうしたらみんな後に続く」。

――できれば、全員を伸ばしてやりたいのですが。

それが理想ですが、とても難しいことです。まずは意欲と能力がある人に権限を与えることです。

また、動物学的にも、2割は遊ばせておくことが必要なのです。そうしないと異常事態で人手が必要なとき、対応できません。それに、全員が同じ方向を向いているのではなく、1~2割の人が横を向いているほうが、「健全な社会」であるとも言えます。

――どうしてですか?

全員が指導者と同じほうを向いている組織は不自然でしょう。国レベルでも、20世紀、ほぼ全国民が指導者のほうを向いていたのは、ヒトラーとスターリンのときだけですから。でも、国民が「ハイル・ヒトラー」とか「スターリン万歳」と言ったのは、恐怖から。「横を向いたやつはみんな殺すぞ」とやっていたわけです。

人間とは面白いもので、「ヒトラーやスターリンのような一律なやり方はおかしい」とわかっていながら、自分が指導者になると、「横を向いているやつは許せない」と、自分のほうを向かせるのに時間と労力を使ってしまうのです。

――私の部署は健全だったんですね。横を向いている部下もいますから……。

Answer:まず「優秀な2割」に権限を与えて伸ばしてやりましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。