上司のホンネが気になるとき、飲みニケーションの機会があればいいのだが、上司がもともと群れるのを嫌い、「仕事の話は仕事の場で」という実直な人だと、部下を連れて飲み歩くようなこともよしとしない。

「ストレートに『飲みにいきませんか?』と誘っても、『いや、今日は忙しくて』などと断られるのがオチ。そこで、上司の好きなものを調べ、たとえばホタルイカが好きだとすれば、『田中部長、ホタルイカのうまい店を見つけたんです! 行きませんか?』と誘えば、目的は『飲みにいく』ではなく『好きなものを食べにいく』となり、『YES』の返事をもらいやすくなります」(『伝え方が9割』を上梓したコピーライターの佐々木圭一氏)

これのバージョンアップ版が、「田中部長の好きなホタルイカのうまい店か、流行の塩麹料理の店に行きませんか?」と、選択の自由を相手に与える手法だ。

「人はAかBかの『選択』を迫られると決めやすいのですが、『判断』を求められると『NO』と答えがちです。これは営業活動においても同様で、たとえ顧客が『いい商品だな』と思っても、『買いませんか?』と判断を迫られると『今日のところは結構です』と答えがちになる。ところが『Aという商品とBという商品がありまして、どちらがいいですか?』と尋ねれば、『じゃあ、こっち』と答えてもらえるのです」(佐々木氏)

さらに上司をその気にさせるのが、「過去の成功体験を聞きたい」と申し出る手法だ。

「上司の好きなことをイメージしていくと、ホタルイカなど食べ物や嗜好品といったものも頭に浮かぶでしょうが、こちらとしてはホンネ、つまり話を聞きたいわけです。上司が好んで話したがるテーマといえば、なんといっても過去の成功体験。『田中部長が中国で成功された仕事、どうやられたんですか? 飲みながらじっくりとお話をうかがいたいのですが?』と誘ってみましょう」(佐々木氏)

その際、参加メンバーが複数の場合は、「誰が参加するかを明示することも重要」(NHKでのキャスター歴17年、「正統派スピーチ」指導の第一人者として活躍する矢野香氏)だという。「この人がいると話しにくい」といった上司の事情もあるからだ。

コピーライター 佐々木圭一
上智大学大学院を卒業後、1997年広告会社に入社。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞、アジアで最も評価されAIMアワードグランプリを獲得。著書に『伝え方が9割』がある。
正統派スピーチコンサルタント 矢野香
NHKでのキャスター歴17年。主に報道番組を担当。現在は政治家、経営者、上級管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。主な著書に『その堅苦しい話し方は、行きすぎです!』などがある。