サンフランシスコ最大手が破綻!

タクシー業界に詳しい専修大学教授の太田和博によると、近年のタクシー規制は「緩和と強化の間で揺れ動いてきた」。02年の規制緩和によって「タクシーあまり」が問題化すると、今度は09年施行のタクシー適正化・活性化法により、一転して大幅な減車が行われるといった具合である。

太田は「白タク解禁の可能性は低い」と見るが、政権の意向によっては一気に規制緩和へ傾くこともありえないことではないだろう。では、規制がなくなったらどうなるのか。

「自動車のライドシェアを含めて、世界中でいまシェアリングエコノミー(共有型経済)化が猛烈な勢いで進んでいます。先進国では消費税率が10%を超えると、急激にシェアリングエコノミーのほうへ需要が移ります。日本もそうなるかもしれません」

シェアリングエコノミーの主役の一つ、Airbnb(民泊)の実践者でもあるITコンサルタントの大津山訓男は、こんな予測を口にする。

(左)専修大学商学部教授 太田和博(右)ITコンサルタント 大津山訓男

なぜ消費税率が関係するかといえば、自宅や自家用車を個人が提供するビジネスであるシェアリングエコノミーでは、多くの場合、サービスの提供側が消費税の納税義務のない小規模な個人事業主になるからだ。

日本の消費税率は現在8%だが、政府は17年4月に10%へ引き上げる方針を明らかにしている。大津山の予測に従えば、白タク解禁と消費税率10%の2つの条件がそろったら、日本でもウーバーやそのライバルであるリフト(Lyft)が爆発的に流行するかもしれないのだ。

しかもいったん普及が進むと、タクシー会社への影響は甚大だ。日本とは規制などの環境が異なるとはいえ、16年1月には米カリフォルニア州サンフランシスコで、地元最大手のタクシー会社が破産した。ウーバーやリフトの台頭で輸送人員が半減したことが経営不振のきっかけだとされている。

猛威を振るうウーバーやリフトという「黒船」にどう対抗するか。いま、世界中のタクシー会社経営者が頭を悩ませているのはそのことである。むろん、日本交通も例外ではない。