2016年3月20日(日)

なぜグローバル化は日本人から「品格」を奪ったのか

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劣化した政治家と官僚、そして

市井の声――大所高所からの発言ではなく、平凡な庶民の思いという意味である。恩地祥光氏が、この2年ほど朝日新聞の「経済気象台」に書き続けたコラムは、読んでいて実にわかりやすい。タイトルに経営と銘打っているものの、身近なニュースやアベノミクスの行方、日本経済の課題が幅広く取り上げられ、格好の社会時評となっている。

『経営の焦点』恩地祥光著 プレジデント社

著者は、1977年に新卒でダイエーに飛び込んだ。同社が小売り業界初の1兆円突破に向かって快進撃をしている時期である。そして、26歳のとき、創業者・中内功氏の秘書に抜擢され、それから4年間、いわゆる“かばん持ち”として仕える。おそらく恩地氏は、カリスマ経営者の一挙手一投足を目の当たりにしながら、マネジメントを学び、見識を深めたことだろう。

そのことが「ハゲタカと呼ばれた外資系再生ファンドの功罪」と題するコラムを読むとわかる。企業はヒト・モノ・カネで成り立っているものの、バランスと順位(ヒトが1番目)は不変という日本的経営の良さを、外資が壊したと指摘。「ハゲタカが求めるカネ(配当や売却益)に経営の重点が移り、ヒトはカネを生み出す『機能』としてしか見ない傾向が定着したことが、いかに日本企業を劣化させたか」と嘆く。

だがしかし、それ以上に劣化したのが政治家と官僚である。「『東京オリンピック』迷走の責任者は誰か?」という項は、そのことを如実に浮き彫りにする。新国立競技場建設計画では、当初のデザインだと2520億円という工事費がヤリ玉に挙がり白紙撤回。大会エンブレムにいたっては、選出された作品に盗作疑惑が持ち上がり、税金を無駄にした。恩地氏は、これらの問題について「経営感覚のある人材をトップに据えない限り、政治家や官僚の責任のなすり合いが繰り返されるだけだろう」とし、文科省を筆頭とした当事者意識の欠落を指弾する。

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