繰り上げ返済より借金したほうがいい

【藤川】私のところにも銀行から話がきましたよ。「ぜひとも借りてくれ」って(笑)。

【菅井】藤川さん、「選ばれた一部の人」ですよ。元銀行員として言うわけじゃないですが、ぜひ借りてください。

【藤川】たしかに。今はすごく低金利ですもんね。

菅井敏之(すがい・としゆき)氏

【菅井】そうそう。それに、たとえ借金だとしても、絶対に手元に現金があったほうがいいんですよ。結局、倒産する会社はお金を借りすぎているわけじゃなく、手元に現金がなさすぎて倒産している。これは家計にも言えることで、多くの人は「金利がもったいない」と思って住宅ローンをガンガン繰り上げ返済するんですが、「借金もないけど預金もないAさん」と「借金が1000万円あるけど、預金も1000万円あるBさん」を比べた場合、人生を経営するうえで安全なのは明らかにBさんです。差し引きしたらどちらもゼロで、一見変わりないように見えると思います。でも、現金を持っていれば何かトラブルがあったときに銀行がお金を貸してくれるんです。

【藤川】まさに銀行員の考え方ですね。だけど、おっしゃる通りですよ。企業も家計も資産側と負債側のバランスがしっかりとれて、流動性が確保できていれば潰れませんからね。

【菅井】普通のサラリーマンだって、たまたま取引先が「今勤めている会社」というだけの「自分株式会社の社長なんだ」という意識を持つべきですよ。自分の人生を安定経営していくためには、いつでもお金を借りられる状態にしておかなくてはいけないんです。

【藤川】それなのに、「いい大学出て、いい会社に入ったんだからもう大丈夫」と安心してお金を成り行きまかせにしてしまう人が本当に多い!

【菅井】大丈夫なはずないんですよね。いい会社に入ってたくさん稼いだって、支出が多ければ誰にでも破綻する可能性はあるのに。