2015年、日本のワイン市場に大きな2つの変化が起こった。

1つは、10月30日に国税庁が「日本ワイン」の定義を明確にしたことである。国産ブドウのみを原料とし、日本国内で製造されたワインだけを「日本ワイン」と呼ぶようにする。例として、一つの地域で育てたブドウを85%以上使い、同じ地域で醸造された場合は、その地域や品種をラベルに表示できるなどの予定だ。

メルシャン代表取締役社長、横山清氏

日本ワインを定義する目的は、日本国内で製造されるが、輸入果汁などを使って造る「国内製造ワイン」との区別を明確にすることだ。国内製造ワインの場合は、「海外原料使用」などのラベル表示が義務づけられるほか、ラベルに品種の表示ができない。日本国内で1年間に流通するワイン(4177万ケース、2014年)の内訳を調べると、輸入ワイン:国内製造ワイン:日本ワイン=70:26:4になるという。

もう1つの変化は、日本がワインを輸入する相手国の変化だ。これまで長年輸入量1位だったフランスに代わり、2015年は初めてチリ産ワインが1位になったのである。

日本国内において、ワインのシェア1位であるメルシャンにとって、この2つの変化は、追い風なのだろうか? メルシャンは2016年にどのような戦略を採るのか、同社代表取締役社長横山清氏に聞いた。

ワインの消費量は年々伸びている

日本の成人1人当たりの酒類消費量は82.2リットル(H24)。101.8リットル(H4)をピークにここ20年ゆるやかに下がり続けているが、「そんな中、逆に消費量が伸びているお酒がワインなんですよ」と横山氏は話す。

日本のワイン市場は成長を続けている。「2008年のリーマンショックを底として、日本のワイン市場は7年連続で成長しており、ワイン消費量は3年連続(2013~2015年)で過去最高を更新しています。とはいっても、日本人が年間にワインを飲む量は1人当たり約3リットル。「1人3リットルというのは、フルボトルワイン(750ml)4本分です。清酒(4.6リットル)や焼酎(7.2リットル、甲類・乙類合わせて)に比べるとまだまだ少ない、伸びる余地は大いにあると見ています」(横山氏、以下同)

どうやって日本人のワイン消費量を伸ばすのか。2014年から2015年にかけて、国内のワイン販売量が昨年比で2%増える中、メルシャンのワイン販売量はマイナス1%とやや減らしている。2016年の戦略としてメルシャンが考えているのは、伸長著しい日本ワインと、フランスを抜いて輸入量1位になったチリワインを強化し、さらにエントリー層向けの商品強化で裾野を広げるという3本柱だ。