サービス網の強化で大手2社を追撃

藤野道格ホンダ・エアクラフト・カンパニー社長

現在、北米、欧州、ブラジルの計11拠点で販売しており、受注数は100機を大きく超えるレベルとなっている。12月下旬には1号機の引き渡しも済ませた。生産台数は月産3~4機で、2年目からは5~6機に増やしていき、その後については今後の受注状況を見ながら調整していく計画だ。工場の能力としては年間100機ぐらいまでは大丈夫だそうだ。

購入者はアントレプレナーや中小企業の社長など比較若い人が多く、これまでの小型ビジネスジェット機を買ってきた層とは若干違っているという。そのため、藤野社長はホンダジェットによって、マーケットを広げていく起爆剤になることを期待している。

しかし、航空機の世界は商品が優れているからといってたくさん売れるとは限らない。というのも、航空機はメンテナンススケジュールが明確に決められていて、それにきちんと応えられるようなアフターサービス体制を備えることが重要だからだ。しかも、精度が高くなければいけない。

現在、米国でのホンダジェットのサービス拠点は5カ所。1時間半以内に整備にいける体制を敷いているが、整備技能レベルにばらつきがあるそうだ。そのため、整備士の人材教育をはじめ、アフターサービスに力を入れている。「どこへ行っても同じようなレベルでできるようにしていきたい」と藤野社長。

その藤野社長は1984年に東大工学部航空学科卒業後、「当時の航空機産業には魅力が感じられず、クルマの技術者になろう」とホンダに入社。ところが、86年にホンダが航空機の研究開発に着手したのを機に、「飛行機をやれ」と言われた。

「私自身としては、本田宗一郎の夢とかという次元の仕事ではなく、毎日目の前の仕事をこなしていくという感じでした。ただ、飛行機ができあがって、本田さちさんに挨拶に行ってその模型を渡したら、それを宗一郎さんの遺影の前に飾られて、さちさんが『主人が生きていたらどんなに喜んだでしょう』と話をした時には、ホンダで飛行機をやることは特別な意味があるんだなと感じたのを覚えています」

こう話す藤野社長は、セスナとエンブレアが小型ビジネスジェット機市場で幅をきかすなか、「その2社よりもさらに良いサポートネットワークで十分なブランドを築き上げて次のステップに入っていく」と意気込んでいた。

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