2016年3月12日(土)

「がん離婚」なぜ夫ががんになったら、妻に見捨てられるのか

ドキュメント 妻ががんになったら【16】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
桃山 透 ももやま・とおる
フリーランスライター

1968年、大阪府生まれ。ビジュアルリテラシー(東京支部)所属。大学卒業後、金融系会社の営業、コピーライター、出版社の編集者、業界新聞の編集長を経て、独立。主にビジネス書、実用書、医学書関連の執筆・編集・監修に携わる。得意なジャンルは整理術、手帳術で、著書に『サクッと1分間 整理・ファイリング術』などがある。

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フリーランスライター 桃山透=文
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夫婦仲が悪ければ、すぐに離婚の危機は訪れる?

「妻ががんになったことが原因で、離婚したがる夫はめずらしくない」ということを知ったとき、信じられませんでした。ただ次の瞬間、「夫ががんになったことが原因で、離婚したがる妻はもっと多いだろうな」と思いました。これは治療費にお金がかかるのはもちろん、将来、病状が悪化することで、いままでのように夫が働けなくなり、稼ぎが減る可能性があるからです。

貯金が十分あって夫が手厚い保障の民間の保険にも入っており、さらに妻が正社員として働いていれば、まだ離婚の危機は少ないかもしれません。ところが、子どもにお金がかかる時期で貯金があまりなく、夫が不十分な保障の保険しか入っていなくて、妻が派遣社員やパート、専業主婦の場合、真っ先にお金の心配をする夫婦は少なくないでしょう。

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かつては妻が優秀な正社員だったとしても、ほとんどの人が正社員になるのは難しく、派遣社員になれれば御の字というのが現実かと思います。専業主婦の期間が長い人ほどこの傾向は強くなる、といっても過言ではないでしょう。これでは病状が悪くなることで夫の稼ぎが激減した場合、お金の問題が深刻化するのは火を見るより明らかです。

それでも夫婦仲がある程度よければ、家族が力を合わせて前向きになんとかしよう、という気持ちが生まれてくる妻も多いでしょう。ところが、夫婦仲が悪い場合、すぐに離婚の二文字が頭をよぎる妻は、かなりいると思います。愛情がないのにお金の心配をしながら夫の闘病をサポートするのは、どう考えても無理があるからです。

わが家の場合、夫である私が稼ぎ頭で妻ががんで闘病していますが、これが逆だった場合、結婚、育児のために派遣社員、専業主婦をしていた期間の長い妻が、それほど稼げるとは思えません。それでも私が闘病しながらなんとか働けているうちはいいでしょうが、私の稼ぎが激減したとき、妻が正社員になれず派遣社員で稼いでいたら、すぐにお金に困るのは目に見えています。

お世辞にも私の稼ぎが多いとはいえないため、気の毒になるほど妻はお金に困っています。これが妻ではなく私ががんで闘病していたら、少なくとも妻が娘の将来を真剣に考えたとき、私が捨てられる可能性は高いでしょう。あるいは、家族に迷惑をかけないために、私が離婚話を切り出すと思います。お互いに愛情があったとしても、がん闘病には、お金がなければ、叩きのめされるような現実を突きつけられることが少なくないのです。

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