がん闘病にかかる「見えるお金」と「見えないお金」

がん闘病にはお金がかかる、と思っている人は、結構いるかと思います。ただ、実際にどのくらいかかるのか、わかっている人は、少ないのではないでしょうか。私も妻が乳がんになったとき、いくらお金がかかるのか、不安になりました。あまりの不安さにダメ夫である私の場合、とにかくお金のことから目を背け、がむしゃらになって働くしかない、と自分に言い聞かせていました。

連載「ドキュメント 妻ががんになったら」が書籍化されました!『娘はまだ6歳、妻が乳がんになった』(プレジデント社刊)

どのようながん闘病をするかにもよりますが、年収500万~600万円ほど稼いでいる人で、国民健康保険料を払い、平均的な民間の保険に入っていれば、貯金は殖やせなくとも、なんとかなるのではないか、と思います。

実際、600万円以上稼いでいると思われる人で、闘病のための治療費は、それほど負担でないのでは? と思っている人は、少なくないように思います。私の周りにも、遠回しにそう聞いてくる人が、何人かいました。たしかに把握しやすい治療費で考えれば、そのとおりだと思います。それでも、これから子どもの学費がかかる家庭や、安心して老後を送りたいと思った場合、500万~600万円では十分ではありません。

わが家の場合、私と妻、娘の3人で国民健康保険料は月5万円ほど払っています。だれもが払っている保険料ですが、これを払っているため高額療養費制度が適用され、検査費や薬代も含め、妻の治療費が月4万4400円(治療開始3カ月間は8万8800円)ですんでいるのです。

このほか、民間の保険会社に払う妻の保険料が半年に1回2万円(年間4万円)ほどかかり、私の保険料が毎月2万2000円ほどかかっています。低額の保険ではありますが、この保険に入っていたため、妻が入院したときに少し助かりました。

つまり、月々かかる妻の治療費に民間の保険料を含めると4万8000円ほどになります。ただ、私の保険料を含めると、月7万円ほどかかることになり、さらに国民年金保険料を含めると、月12万円ほど払っていることになります。自営業の私としては、かなり痛い出費です。

それでも妻の治療費だけを見てみると、月4万4400円です。ここだけを見ていると、たしかに500万~600万円ほど稼いでいる人からすれば、なんとかなるお金です。ただ、手術代は、これとは別に費用が発生します。

たとえば、妻の場合、乳がんによる右乳房全摘出手術で16万円ほど、左鎖骨下に点滴ポートを埋め込む手術を2回したため、20万円ほどかかりました。これも5年弱の闘病で36万円ほどなので、たいした金額とはいえないかもしれません。ここまでが、把握しやすい治療費“見えるお金”です。