闘病のために「離婚する」という選択肢

夫ががんになり、病状が悪くなることで稼ぎが激減した場合、十分な貯金がないのなら、妻が働くことは避けられません。ただ、専業主婦の期間が長く、パソコンが苦手でワードもエクセルも使えないのなら、派遣社員になるのも難しいかと思います。パートで働くとなれば、時給1000円で1日8時間、月20日働いたとして16万円です。それでも夫婦愛が強ければ、なんとかやっていこうという気になるかもしれません。

ところが、最悪なことに夫が働けなくなった場合、月16万円の稼ぎでは、月20万円くらい貯金を食いつぶすことになるかと思います。ならば月25日パートに出て20万円確保しよう、と考える妻もいるでしょうが、それでも必要なお金には遠く及びません。また、家事の大半をすることになるのも妻です。もちろん夫をサポートしなければならないのも妻です。自分の時間がなくなるだけでなく、疲れを明日に残さないようにするだけでも大変です。さらにお金に余裕がないため贅沢ができないのはもちろん、ちょっとした日用品を買うにも、倹約を意識せずにはいられなくなります。

ここまでくると、夫に愛情があっても、急速に減っていく貯金の残高を見たり、疲労の尾を引きずりながら日々に追われたりして、絶望しないほうがおかしいでしょう。まだ子どもが小さければ、この子の将来まで奪ってしまうことになるかもしれない、という危機感を覚えない妻はいないと思います。

夫に愛情があり、きちんとサポートしてあげたい、とどれだけ強く思っていても、イライラしたり、夫を恨んだりすることが増えてくるのは避けられないでしょう。そして、離婚すればいまの状況よりかなりマシになる、という考えが頻繁に頭をよぎるようになるかと思います。親が金持ちで、いくらでも援助が受けられるか、なんらかの方法で大金を手にしない限り、この現実問題を改善することはできません。

妻が正社員、派遣社員、パート、専業主婦に関係なく、夫ががんになる前から夫婦仲が悪く、修復できそうにない場合、夫は追い詰められる一方です。自分ががんになったことで常に不安を抱えている状態なのに、さらに妻から文句をいわれる日々を送っていたら、闘病に専念することができません。免疫力も落ちていく一方です。がんになったことで自分を責める夫なら、近い将来、働くことができなくなるほど病状が悪化し、命を落としてしまっても不思議ではありません。

これは厳しい提案ですが、このような夫婦は離婚したほうがいいかと思います。小さな子どもがいたとしても、です。免疫力が落ちることで病状が悪化しないうちに闘病に専念し、なんとかがんを治すべきです。そして、がんを克服することができたら、養育費を払ってあげればいいでしょう。つらいことですが、こちらのほうがまだ建設的な考え方ではないかと思います。

死んでしまっては、自分の将来はもちろん、妻が稼げなかった場合、子どもの将来まで奪ってしまう可能性が高くなってしまいます。身も蓋もない提案、と思われる人も多いでしょうが、がんを克服するのは、そんなに甘いものではないのです。

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