2016年3月19日(土)

なぜ無駄遣いをすれば、「がん余命は延ばせる」と思ったのか?

ドキュメント 妻ががんになったら【17】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
桃山 透 ももやま・とおる
フリーランスライター

1968年、大阪府生まれ。ビジュアルリテラシー(東京支部)所属。大学卒業後、金融系会社の営業、コピーライター、出版社の編集者、業界新聞の編集長を経て、独立。主にビジネス書、実用書、医学書関連の執筆・編集・監修に携わる。得意なジャンルは整理術、手帳術で、著書に『サクッと1分間 整理・ファイリング術』などがある。

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フリーランスライター 桃山透=文
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妻の生存は「引っ越し」のおかげか?

妻が乳がんの手術を受けた翌年の5月、引っ越しをすることにしました。乳がんの告知から1年。再発を防止するには日々の健康管理も重要ですが、それだけではダメなような気がしたからです。そこで、快適なマンションにでも住めば、少なくとも妻の免疫力が上がるはずと思い、スカイツリーとディズニーランドの打ち上げ花火をゆったりと眺めることができる、ルーフバルコニーつきのマンションに引っ越ししたのです。

連載「ドキュメント 妻ががんになったら」が書籍化されました!『娘はまだ6歳、妻が乳がんになった』(プレジデント社刊)

家賃は13万円。私の収入からすれば少々高いように思えましたが、当時は少ないとはいえ400万円くらいの貯金があり、一番の得意先からの仕事だけでも年間400万円は見込めたため、なんとかなると思ったのです。引っ越しした日の夜、家族でディズニーランドの打ち上げ花火や、ライトアップされたスカイツリーを眺めながら、すべてはいい方向に進む、そう信じて疑いませんでした。

ところが、引っ越ししてわずか数カ月で、一番の得意先からの仕事がなくなりました。この出版社の仕事をメインで受けていたため、疎遠になってしまった出版社も数社ありました。これらの出版社から、いまさら簡単に仕事を振ってもらえるはずがありません。このままでは年間300万円を稼ぐのも難しく、一気にお金の心配に襲われました。

さらに数カ月後の12月、妻の再発の宣告――。転移先は全種類のがんのなかで5年生存率がもっとも低いといわれている肝臓。しかも、肝臓の約3分の1ががんに侵されていたのです。「治療を受けなければ2カ月もちません」主治医にそう告げられ、本当の意味での地獄が始まりました。

引っ越しする方角が、悪かったのか?……そう思わずにはいられませんでした。

それから3年が経ったいま、妻は生きています。この間、点滴による治療を軽減するため、左鎖骨下に点滴ポートを埋め込む手術を2回しましたが、がんに関する手術をすることはなく、健康な人より体力はないとはいうものの、あまり支障をきたすことなく、自宅で日常生活を送っています。

がんが肝臓に転移したときのことを周りの人に話すと、「よく3年もがんばっていますね」と驚かれることが多いのですが、これは快適なマンションに引っ越ししたおかげ、と思っています。

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