損をしたくないと思うあまり、知らぬ間に損をしていることがある。どうしたらその損を減らせるのか。行動経済学に沿って自分の数字力をチェック。

Q. 定年退職した父親が老後の生活を考え、退職金の大半を毎月分配型投資信託につぎ込んだ。父は「給料がない自分には、月ごとに分配金をもらえるほうが助かる」と喜んでいる。父の行動は損か得か。

A. 「メンタルアカウンティング」による誤判断です。

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人間の心の中には財布が存在しています。しかも財布は複数あって使ったお金は別々に勘定されていますが、トータルの残高管理はまったくなされていません。

これは「メンタルアカウンティング」と呼ばれ、合理的ではない行動を生み出す原因になっていると考えられています。この父親もメンタルアカウンティングのワナにはまっています。毎月分配型投資信託を銀行預金と同じ心の財布に入れているからです。

預金とは「預ける」という字を使っていますが実際には個人からの銀行への貸し付けで、貸したお金は銀行の負債になります。銀行はそのお金をどう使おうと自由ですが、借りたお金を使って損をしても、約束した金利と元金は預金者に返さなければなりません。

しかし、投資信託は個人投資家が運用会社にお金を預けている性質のものです。預けたお金は運用会社のものにはならず、必ず別々に管理されています。ですから投資信託は儲けも損もすべて投資家のものになります。

銀行預金に慣れているため銀行利息と同様、毎月分配型投資信託は運用会社が儲けた自社の利益の中から分配金を払ってくれていると勘違いしがちですが、実際は投資家が投資したお金から支払われています。仮に基準価額1万2000円の投資信託で2000円配当を払うと、基準価額は1万円に下がります。分配金をもらった分、投資信託の純資産は減っているのです。

▼もう1問応用問題にTRY!

Q. 車を買い替えることにした。住宅の頭金用に積み立てている定期預金を解約すれば全額現金で買えるが、マイホームの夢が遠ざかる。そこで定期預金には手を付けず、オートローンを組んで車を買った。この行動は損か得か。

A. 損。定期預金の金利よりオートローンで支払う金利のほうが高い。

大江英樹(おおえ・ひでき)
1952年、大阪府生まれ。野村証券で個人資産運用業務、企業年金制度のコンサルティングなどに従事後、2012年オフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。日本経済新聞電子版で「投資賢者の心理学」連載、その他『定年楽園』『その損の9割は避けられる』など著書多数。近著に『老後貧乏は避けられる』。