何となく、過去のフォーマットをコピペして作っていないか? 数字やデータを並べただけで満足していないか? 必要なのは次のアクションを生む文書だけ──これが一流企業の常識だ。

ミスやトラブルの報告書を作成するとき、詳細に知らせようとムダに長い文章を書いてはいないだろうか。しかし、情報量が多ければいいというのは安直。トヨタOBであり、現在はOJTソリューションズでトヨタ流問題解決メソッドの伝道師として活躍する白木政行氏は、こう教えてくれた。

「長い文章は報告者の主観的な思いが交じりがちで、かえって現状が把握しにくくなります。報告は、いつ、誰が、何を、どうしたのかという情報を、余計な装飾をせずに個条書きにする。経緯が複雑な場合は、フローチャートや画像で、視覚的にわかりやすくすればいいのです」

さらにトヨタ流には続きがある。トラブルやミスは起きたことを報告するだけでなく、二度と同じことを繰り返さないための対策や、その効果の確認まで含めて報告するのだ。

対策を立てるには、原因を特定する必要がある。注意したいのは、ヒューマンエラーを原因としないこと。トヨタでは“真因”という言葉をよく使うが、ヒューマンエラーは表面的な原因であり、真因ではない。もし誰かの注意不足でミスが起きたなら、注意不足を招いた環境や、ミスが起きてもカバーできる仕組みがなかったことが真因の可能性がある。では、どうやって真因を見つけるのか。

「トラブルやミスは、従来と何かが変わったときに起きやすい。トヨタではそれを“変化点”と呼びます。担当者、対象、手段、業務フローの4つの観点から変化点をチェックしていくと、真因にたどりつきやすいです」

真因が特定できたら、次は対策。ヒューマンエラーが原因ではないのと同じく、「気をつける」「頑張る」といった精神論も対策になりえない。

「対策は具体的な行動や仕組みに落とし込むことが大切です。対策が本当に有効かどうか、少なくとも2カ月はフォローする。効果が確認できたら、標準化してマニュアルなどを改訂し、さらに他部署など横展開できれば理想的です。報告の時点で標準化や横展開がまだできていないなら、いつどのようにやるのか予定を書く。そうすることで報告しっぱなしを防げます」