バブル崩壊後の中国が軟着陸できない理由

とうとう中国バブルがはじけた。6月中旬の上海市場の暴落以降、中国当局は政策金利の利下げや新規株式公開の大幅削減、大手金融機関による株価買い支え、大株主の売却禁止措置など株価対策を講じてきたが、上海市場は乱高下しつつ下げ止まらない。9月初頭のG20(主要20カ国・地域の財務省・中央銀行総裁会議)では中国の中央銀行である中国人民銀行の周小川総裁から「(バブルが)はじけるような動きがあった」とバブル崩壊を認める発言があったと伝えられている。

バブルは経済成長の過程で容易に発生するし、発生したバブルは必ずどこかではじける。どこの国も経験しているから、別段、驚くことではない。問題はバブルがはじけた後の対処の仕方だ。アメリカがイギリス経済をGDPで抜いたのは1900年。新興大国の経済成長はいつしかバブル化して29年にはじけ、世界大恐慌のトリガーを引く。アメリカはニューディール政策で経済をコントロールしようとしたがうまくいかずに、結局、世界大戦へと雪崩れ込んでいった。はじけたバブルを軟着陸で収束させるのは難しい。大抵はハードランディングして大不況に突入、路頭に迷う人が大勢出てきて、治安も悪化、取り付け騒動が起こり社会不安が増大――というパターンにはまる。

その点、低成長へとうまく軟着陸できた珍しいケースが日本。バブル崩壊後の「失われた20年」でGDPはゼロ成長と言われているが、その間、1ドル=80円から120円に為替は50%も円安に動いた。国民1人当たりGDPのような指標はドル建てか、円建てかで世界ランキングがまったく違う。冷静に考えれば景気が悪いと言いながら失業率は低いし、路頭に迷っている人もほとんどいない。当面、日本経済が大きくズッコケる危険性は低い。かといって大きく成長することも考えられない。アベ・クロバズーカで刺激しても1%も成長できないのだから。日本はまさに低成長の見本のような国だ。

さて中国のバブル崩壊はどうか。政府当局は一生懸命空気を入れて経済を膨らませているのだが、抜けていく空気のほうが多い状況で、これはもう完全にパンクしている。私の最大の懸念は共産党指導部が中国経済の現実を正しく理解していないことだ。トウ小平の改革開放以降、中国は社会主義に市場経済を取り入れた、「社会主義市場経済」を標榜してきた。社会主義における経済とは中央集権的な統制経済、計画経済であり、本来、市場経済とはまったくの別物だ。しかし、あまりに鮮やかな成長軌道を描いてきたために、政府も、豊かさを享受してきた人々も、自分たちは市場経済にシフトしたものと思い込んでいたのだ。