2015年7月10日(金)

なでしこジャパンは一日にして成らず

スポーツ・インテリジェンス【第18回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
松瀬 学 まつせ・まなぶ
ノンフィクションライター

1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書は『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)など多数。

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松瀬 学=文 中西祐介/アフロスポーツ=写真
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効果が出始めたエリートなでしこ育成

ローマは一日にして成らず、とはよく言ったものである。何事も、栄光は長い苦難の歴史と努力があればこそだろう。とくにスポーツ界では。連覇を逃しながらも、サッカーの女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会で準優勝した日本女子代表『なでしこジャパン』の活躍を見て、つくづくそう思った。

キャプテンを務めた宮間あや選手(写真=中西祐介/アフロスポーツ)

「選手は一丸となって最後まで戦ってくれました」。7日。なでしこジャパンの帰国会見で、日本サッカー協会(JFA)の野田朱美・女子委員長は選手をねぎらい、女子サッカーの環境面の改善に触れた。

「環境面では、ちょっとずつですけど、よくなっている部分はあると思います。チーム数が増えたり、選手の待遇がよくなったり……。これからは、育成のところ、もうちょっと下の(世代の)ところの受け皿が一番大事になってくるのかなと思います。この灯(ともしび)を消さないよう、選手の悔し涙を無駄にしないよう、女子サッカーの発展、普及をしっかり考えていきたいと思います」

2012年ロンドン五輪銀メダルを含め、なでしこジャパンは世界大会で3度も続けて決勝に進み、なでしこ人気も定着した感がつよい。どだい競技のメジャー化には世界規模の大会で好成績を挙げるのが一番である。だからタレント発掘から育成・強化まで、つまり、中学生・高校生世代の代表を経験して日本代表に入って活躍する、その流れをつくるのが重要となるのだ。

サッカーが女子の本格強化を始めたのが、2000年ぐらいからである。U-12(12歳以下代表)から各世代の選抜チームが日本代表を頂点とするピラミッド型となる一貫指導体制の確立を目指し、好素材の発掘・育成に乗り出した。05年には、女子にもユース育成の中心的役割を果たす「ナショナルトレーニングセンター制度」が本格整備された。

これは、いわばエリート選手養成制度である。市町村、地区トレセンから都道府県トレセン、地域トレセンとピラミッド型で構成され、世代別の代表候補クラスのナショナルトレセンにつながることになる。06年には、JFAが「JFAアカデミー福島」(現在は静岡に一時的避難)を開校し、中学生・高校生相手の人材育成に取り組んでいる。

JFAアカデミー福島は今年、10年目。今回のW杯の日本代表のゴールキーパー・山根恵里奈(千葉レディース)と菅澤優衣香(千葉レディース)は同アカデミーに所属していた。2011年の前回W杯でのなでしこジャパンの初優勝で人気は爆発し、女子選手の数は一気に増えた。12年ロンドン五輪では銀メダルを獲り、14年度のJFAの女子の登録選手は約4万8000人となった。

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