ついに「橋下劇場」が幕を閉じた。2008年の大阪府知事初当選から一大旋風を巻き起こした橋下徹大阪市長。5月17日に投開票された「大阪都構想」への賛否を問う住民投票に僅差で敗れ、政界からの完全撤退を表明した。

「敵をつくる政治家が世の中にずっといるのは害だ」とも語った橋下氏。だが、これを額面通り受け取る向きは少ない。「喧嘩上手」「暴君」など毀誉褒貶が激しい政治家はこれからどこに向かうのか。

住民投票での否決を受けて記者会見した橋下氏は「都構想が受け入れられなかったのは(自分や維新の考えが)間違っていたということになる」と冷静に分析してみせた。記者団から今後の活動について確認されても「政治家は僕の人生で終了です」とキッパリ。12月の任期満了に伴い市長を辞め、自身が最高顧問を務める維新の党からも身を引く考えを示した。

維新にとって「原点中の原点」である大阪都構想の否定は党分裂の危機に直結するのは間違いない。元々、橋下氏の勢いと人気にすり寄って当選を果たした維新所属議員は一気に旗頭を失い、離党を示唆する議員が出ている。

「はっきり言って『最悪のシナリオ』に向かいつつある。橋下さんには勝ってもらいたかったね……」。住民投票から一夜明けた18日、首相側近の一人はこう打ち明けた。首相サイドは長期政権を築いて断行したい改憲や安全保障法制整備などで維新の協力は不可欠とにらみ、陰に陽に支えてきた。今回の住民投票では「橋下氏が敗れたら来年の参院選に出てくる。国政に出てきたら自民党は負ける」(首相周辺)として「都構想の可決→橋下市長の継続→国政転身なし」を期待した。

いまや一強多弱の安倍自民党が気をもむのは「ポスト安倍の不在」だが、安倍晋三首相は後継者の一人に本気で橋下氏を考えていたとの証言もある。今後は民主党主導で野党共闘が進み、維新分裂に伴う政界再編がスタートするとみられるが、すべては一人の弁護士に戻る男がカギを握る。「これで終わらせる安倍さんじゃないよ……」。自民党幹部の一人は首相側がさらなる救いの手を差し伸べ、橋下劇場「第二幕」が開演する可能性を示唆した。