在宅介護ではこんなケースがあったという。60代後半の妻を亡くした男性は、食事や掃除、洗濯はヘルパーが世話をし、家で失禁をすることもあった。そんな男性でも性的欲望があり、ベッドメーキングの際にヘルパーが女性のパンティを発見した。歩くのもおぼつかず転ばないかと心配するほどで、墓参りにはヘルパーの付き添いを依頼していた。が、1人で新大久保の風俗に通っていることがわかったという。

熟年の恋と性の難しさについて米山氏が話す。

「高齢者の恋愛については温かく見守り、脱管理のやり方を通してきました。ああしろ、こうしろとうるさくすれば本人の意欲がなくなります。私たちのやるべきことは意欲を引き出すことで、とにかく元気になってもらいたいというのが現場の願いです。心も体も元気になることは、性的にも元気になることと同じ意味だと思います」

ところで男の身勝手な思いではあるが、異性との出会いもなく、悶々として欲求を内に秘める熟年男性の性的問題を考えると、発散の場としての風俗店は今どうなっているのだろうか。

超高齢化社会を迎えて、中高年をターゲットにした熟年風俗店が続々と開店していると話すのは、風俗情報誌「俺の旅」編集長の生駒明氏だ。

「“60歳未満のお客様お断り”をキャッチフレーズにしたデリヘル(派遣型風俗)が2012年末、都内にオープンしたし、40歳以上が対象といったデリヘルも増えてきました。一方で在籍する女性が30~40歳の熟女店、40歳以上の超熟女店を謳う店も登場しています。シニアにとっては娘より年下の女性よりも熟女のほうが甘えられるし、親近感もわくのでしょう」

それでも中高年層に人気があるのは、やはりソープランドだという。

「高齢者にとってソープランドは馴染み深い風俗です。ソープランドの多い吉原では、年金が支給される隅数月の15日からしばらくの間は高齢者の客が急増します。彼らは“吉原年金族”と呼ばれていますが、他の風俗でも同様です。早朝から営業しているある格安ソープランドの場合、午前中の待合室は、まるで病院のロビーのようにシルバー男性だらけです」(生駒氏)

おしゃれでダンディーに着飾って遊びにくる彼らにとって、風俗で遊ぶのは非日常の「ハレ」の日なのだという。

「風俗に行くことで若い娘と触れ合い、コミュニケーションも取れる。疑似恋愛もできれば、疑似家族ももてる。シニアにとっては楽しいアンチエージングの手段なんです」(同氏)