「たこ焼き」「鯛焼き」はアレンジ次第

医療関連でいえば、サプリメントも可能性が高い。ネット上ではすでに日本のサプリが販売されているようだが、アラブ・中東地区に支店を設けて本格的に進出する青写真を描いている企業もあるのではないだろうか。

というのも、日本国内では、サプリ・健康食品産業の売上げは既に2兆円規模に達しており、市場は飽和状態なのである。

となれば、生き残りをかけて海外進出ということになろうが、健康志向の高まりを見せるアラブ・中東地区は確かに魅力的な市場である。

私の知る範囲内で一言アドバイスをしておくなら、医薬品としては販売せずに、あくまでもサプリメントであることを強調すべきだ。アラブ・中東地域のどの国にも言えることだが、健康産業に関しては後発国であるだけに、異常なまでに神経質になるところがある。医薬品に関しては、許認可をとるのに途方もない手間と時間がかかるはずだ。

食関連でいえば、タコ焼きや鯛焼きといった手軽に食べられる屋台ものは大ヒットする可能性がある。

何しろアラブ・中東の人々は間食が大好きで、いつも何かをむしゃむしゃと食べている。中でもインスタントな仕上がりでテイクアウトできるものは非常に人気が高いのである。

ただしタコを食べる食習慣がないので、代用品としてどんな具材を使用するかがテーマとなる。またアルコール成分を含むソースはハラーム(禁忌)だし、豚肉由来の成分を含む油や調味料の使用も禁じられている。

鯛焼きも同じだ。魚の形自体が面白いので、興味を引くことは間違いない。ただし、アンコがはたして現地の人々に受け入れられるかどうかは私にもわからない。

サイズを日本のものより小さくして、アンコの代わりにアプリコットジャムやイチゴジャム、あるいはチョコレートを使用するという手も考えられるだろう。

いずれにせよ、進出するにあたってはしっかりとしたマーケティングが必要だろう。中でも、現地の人はどんなインスタントものを食べているのか、あるいはどんな味を好むのかという調査が欠かせない。

彼らにとって日本人および日本という国は「なんかよくわからん」という存在であっても、日本ブランドには絶大なる信頼感を抱いているはずである。

※本連載は書籍『面と向かっては聞きにくい イスラム教徒への99の大疑問』(佐々木 良昭 著)からの抜粋です。

佐々木 良昭ささき・よしあき)●笹川平和財団特別研究員。日本経済団体連合会21世紀政策研究所ビジティング・アナリスト。1947年、岩手県生まれ。19歳でイスラム教に入信。拓殖大学卒業後、国立リビア大学神学部、埼玉大学大学院経済科学科を修了。トルクメニスタン・インターナショナル大学にて名誉博士号を授与。1970年の大阪万国博覧会ではアブダビ政府館の副館長を務めた。アラブ・データセンター・ベイルート駐在代表、アルカバス紙(クウェート)東京特派員、在日リビア大使館渉外担当、拓殖大学海外事情研究所教授を経て、2002年より東京財団シニアリサーチフェロー。2014年からは経団連21世紀政策研究所ビジティング・アナリストに就任。
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