そのサプリメント、続ける/止めるの境界線は?

『なぜ、「おなかをすかせる」と病気にならないのか?』石原結實著(プレジデント社)

よく患者さんが、自分が愛用しているサプリメントや医療器具のパンフレットを私に見せながら「先生、このサプリメント(または医療器具)は効きますか」と単刀直入な質問をしてくる。そのとき、私は「ご自分で実際に1週間ないし1カ月試してみて、

1. お通じがよくなる
2. お小水がよく出る
3. 体が温まる
4. 何となく気分がよい

など、本能で感じられるよいサインがあったら続けられるといいでしょう」と答えることにしている。

私は、自分の健康法で十二分に健康だし、サプリメントも医療器具も利用したことがなく、実際そうしたものについては、何もわからない。患者さんの中には「××というサプリメントをとって目がよくなった」「××という健康食品をとって、膝の痛みがとれた」という人がいらっしゃる。ご本人が実際に試されて、たしかに効果があったのだから、その方の体験を尊重して、「よかったですね。ずっと続けられるとよいでしょう」ということにしている。

しかし、サプリメントに関しては、否定的な学術論文も少なからず存在する。米国の医学誌“New England Journal of Medicine”(1994年)に、以下のような調査結果が載っていた。

フィンランドの男性喫煙者2万9133人(50~69歳)を、無作為に4つのグループに分け、

1. ビタミンE(1日50mg)とβ-カロチン(1日20mg)のサプリメントをとる
2. ビタミンEのサプリメント(1日50mg)のみとる
3. β-カロチンのサプリメント(1日20mg)のみとる
4. 両者とも投与せず

という実験をして、5~8年間追跡調査をした。

そのうち、876人が肺ガンを発症し、β-カロチンを投与したグループは投与しなかったグループに比べて、肺ガンの発生率が18%も高かった(ビタミンE投与グループは、非投与グループと差がない)ことがわかった。

この実験では、β-カロチンの摂取量(1日20mg)はニンジンやカボチャ、ミカンなどの食物を通して食べる量の約10倍の量であった。この量に問題があると私は考えている。ニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜に含まれるβ-カロチンには、ガン、動脈硬化、炎症など万病の一因とされる活性酸素を取り除いてくれる抗酸化作用があることがわかっている。

しかし、そうした優秀な作用は、ニンジンやカボチャ、ミカンなど自然の産物の中に存在しているβ-カロチンについてであり、有用な成分と思われるβ-カロチンのみを抽出して、濃縮して人体に投与した場合、先の実験例のように有害となるケースも出てくるわけだ。

3日飲まないと死んでしまうほど大切な水分も、とりすぎると体に悪影響を及ぼすように、たとえ生命にとって大切なものでも、「過ぎたるは及ばざるが如し」であることを肝に銘ずるべきである。人間の体は、自然の産物である。人間の健康を増進したり、病気を治したりするために必要な成分は、自然の食物の中から、自然な形でとりいれることが一番なのである。

※本連載は『なぜ、「おなかをすかせる」と病気にならないのか?』(石原結實 著)からの抜粋です。

石原結實(いしはら・ゆうみ)●医学博士・イシハラクリニック院長。1948年、長崎県長崎市生まれ。長崎大学医学部卒、その後同大学院博士課程を修了。1982年、イシハラクリニックを東京に開設。
オフィシャルサイト http://www.ishihara-yumi.com/