こうした男女の違いには脳梁(のうりょう)の太さも関係しています。脳梁とは左右の大脳をつなぐ太い束のこと。女性は脳梁が太く左右の連携がよく取れているため、複数の仕事を同時にこなしたり、ひとつの仕事に取り組んでいても、もっと早くやるべきことができたら目の前の作業を中断して急ぎの仕事に着手する臨機応変さも持っています。

一方、男性の場合は脳梁が細いので、ひとつのことを始めたらそれに集中し、終わるまで次にいけないという傾向があります。これが女性から見て「優先順位の高い仕事がきたのにすぐにやらない」となってしまいがちなのです。

では、このような男性に、すぐに仕事をしてほしい場合はどうしたらよいのでしょうか。男性は女性に比べてより多くのドーパミンを必要とする脳を持っており、何かの中毒になりやすいという傾向があります。とにかく仕事を好きになるように仕向けて、「仕事中毒にさせる」という方法があります。

また、男性は社会的報酬に弱い傾向もあるので、「今すぐやっておいたほうが、評価が上がりますよ(役職が上がるかもしれない)」とか「この間のレポートがすばらしかったから、今回も期待していますよ」などと、自己効力感(世界に対して何らかの働きかけをすることができる)が得られるような声かけをすることでモチベーションが上がる。より気持ちよく仕事に取り掛からせることができると思います。

セロトニン合成能力や脳梁の太さは遺伝で決まるのですが、後天的に決まる部分もあります。頭ごなしに決めつけられると本当にそうなってしまうのです。「男だからいつもすぐに仕事をやらない」などといわれると本当にできなくなってしまうことがあります。この現象を「ステレオタイプ脅威」と言いますが、自己イメージの違いによってパフォーマンスに差が出てきてしまうので、あまりレッテルを貼りすぎないように注意しましょう。

脳科学者
中野信子
(なかの・のぶこ)
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻修了。2010年までフランス原子力庁サクレー研究所勤務。最新刊に『成功する人の妄想の技術』がある。
(構成=中島 恵)
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