2014年9月26日(金)

次は自分? 「黒字なのに2割クビ」納得できるか

人事の目で読み解く企業ニュース【10】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
溝上 憲文 みぞうえ・のりふみ
ジャーナリスト

溝上 憲文1958年鹿児島県生まれ。ジャーナリスト。明治大学政治経済学部政治学科卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』(文春新書)で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『「日本一の村」を超優良会社に変えた男』『マタニティハラスメント』『辞めたくても、辞められない!』『2016年 残業代がゼロになる』など。近著に『人事部はここを見ている!』(プレジデント社刊)がある。

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溝上憲文=文
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業績好調でもリストラする東芝、日立化成、エーザイ

ここにきて日本の大手企業のリストラがじわじわと増えている。

スマホの業績不振で今期の赤字を見込むソニーが約1000人の削減、音響・映像機器部門の売却に伴い国内外約1500人を削減するパイオニア、パソコン事業の赤字で900人を削減する東芝などである。

しかも、目を引くのは赤字企業に限らないことだ。従来のリストラは赤字が深刻化し、せっぱ詰まってリストラに踏み切る企業が多かった。

だが、ソニーは別にしても、東芝、パイオニアはいずれも2013年度決算は黒字。7月に40歳以上の社員1000人の削減を発表した日立化成も増収増益である。2014年上半期(1-6月)に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業のうち、エーザイ(応募396人)、三菱製紙グループ(200人)、大陽日酸(100人)といった大手企業も黒字にもかかわらず、リストラを実施している。

その背景には会社が儲かっている今こそ将来を見据えて不採算事業などの贅肉を削ぎ落とそうというものだ。政府の経済財政諮問会議は業績が回復した今こそ業界再編や事業構造改革に着手すべきと主張しているが、好業績企業であってもリストラに躊躇しなくなっている。

こうした構造改革型のリストラが増えれば、景気の動向に関係なく、リストラが恒常化することを意味する。そうなると、日本的リストラのあり方も大きく変化する可能性もある。

日本のリストラの代表的手法が「希望退職募集」である。だが、会社にとってのリスクも大きい。手を挙げた人には退職加算金や再就職支援などの特典がつくが、その結果、優秀な人材の流出も発生しやすい。

希望退職募集の際、企業は事前に「辞めてほしい人」「残ってほしい人」を選別し、辞めてほしい人を退職勧奨し、残ってほしい人を慰留するのが一般的だが、それでも優秀人材の流出は止まらない。

また、大量のリストラにより残った社員の仕事の負担が増し、「次は自分の番かもしれない」という疑心暗鬼が生まれるなど社員のモチベーションも下がりやすい。

さらにメデイアを通じて社外に知られ、リストラ企業として社会的に注目を浴びるとともに、業績が悪いからと考える投資家がいて、株価に影響を与えるというリスクもある。

しかも退職勧奨しても辞めない社員を人事部付き、あるいは職種が違う部署に配転すれば、マスコミに「追い出し部屋」と騒がれ、社会的信用を失うことすらある。

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