2014年11月7日(金)

公務員の年金積立金は手をつけず「サラリーマンの積立金を株に投入」許せるか

人事の目で読み解く企業ニュース【13】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
溝上 憲文 みぞうえ・のりふみ
ジャーナリスト

溝上 憲文1958年鹿児島県生まれ。ジャーナリスト。明治大学政治経済学部政治学科卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』(文春新書)で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『「日本一の村」を超優良会社に変えた男』『マタニティハラスメント』『辞めたくても、辞められない!』『2016年 残業代がゼロになる』など。近著に『人事部はここを見ている!』(プレジデント社刊)がある。

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溝上憲文=文
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国民の年金資産を市場運用にさらす

安倍政権が公的年金の積立金約130兆円の半分をリスクの高い株式市場に投じようとしている。

運用を担当するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の現在の基本ポートフォリオ(資産構成)は国債60%、日本株12%、外国債11%、外国株12%。それを日本株25%、外国株25%にまで高め、国債を35%まで下げることを10月31日にGPIFが発表した。

しかも日本株の許容範囲は±9%、外国株±8%であり、最大で67%までの株式運用が可能となる。金額にして50%は65兆円、67%だと87兆円を株式に注ぎ込もうというのである。

だが、積立金の中身は老後に支給される基礎年金と2階部分の報酬比例年金であり、いうまでもなく会社と従業員が拠出する年金保険料が財源になっている。余裕資金どころか、損失が発生したら将来世代の年金カットにつながりかねない大事なお金であり、しかも株式比率は分散投資の域を超えている。

法律では「積立金の運用は、専ら被保険者のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行う」と定めている。だからこそ安全資産である国債比率を60%にしていたのである。

にもかかわらず、なぜリスクの高い運用比率の見直しを行ったのか。その狙いは、年金資産の拡大と同時に株式投資による日本経済の活性化という成長戦略の実現にある。

GPIFの運用見直しの発端は、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略。その中で公的資金の運用(分散投資の促進等)リスク管理体制等のガバナンス、株式への長期投資におけるリターン向上を目的に有識者会議で検討することが明記された。

これを受けて7月に甘利明経済再生担当大臣の下に「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が発足したが、メンバーのほとんどが積極運用派の学者や民間の金融専門家で占められ、年金の専門家は1人もいなかった。

報告書が11月に出されたが、運用見直しの理由として「被保険者の利益を優先する資金運用は、結果的に、日本経済に貢献することになり、また、各資金は、資金運用により経済成長の果実を享受する立場にもあることから、経済成長と資金運用との好循環が期待される」とバラ色のシナリオを描いている。

資産拡大と経済成長の二兎を追う作戦だが、果たしてそんなにうまくいくのか。

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