『嫌われる勇気』『心配事の9割は起こらない』『一流の男の勝てる服 二流の男の負ける服』『覚悟の磨き方』『外資系コンサルの資料作成術』『問題解決』『ビジネス・フレームワーク』。2014年上半期、よく売れたビジネス書である。これらベストセラーはすべて、あらゆる老若男女に受け入れられているように思えるが、購入者の分類に大きな性差がある。先にあげたタイトルであれば、前半の4冊は男性読者、後半の3冊は女性読者が多い。ここでは本を陳列・販売する書店員の立場から、ビジネス書ベストセラーの購買者の性差について述べたい。

男性読者が購入するビジネス書は、タイトルに「嫌われる」「孤独」「心配」「一流、二流」「覚悟」等の言葉が入るケースが多い。本の売れ行きは、書かれている内容はもちろん重要であるが、タイトルがうまいと、つい手に取り、購入に結びつきやすいようだ。男性読者は「嫌われているのは俺だけではない!」「一流の人物はみな孤独だ!」「最低限、二流とは言われたくない」という意識が働き、こういったタイトルの本を手にとる。辛いのは自分だけではないという自己承認欲求が強いようだ。

逆に女性は「孤独」「心配」などネガティブな言葉を嫌う傾向がある。「~作成術」「~解決」と言ったポジティブ、かつ実用性を大切にして選んでいく。私の勤務する店舗では女性管理職と思しきビジネスパーソンが多い。彼女たちが購買する本は、「綺麗」「幸せ」「人間関係が円滑」という一般女性が好みそうなタイトルではなく、男性ビジネスパーソン以上に実用性や実益を重視する傾向が強いようだ。

性差のない本もある。累計500万部を突破した松下幸之助の『道をひらく』や“世界のホンダ”こと本田宗一郎の名言集は、男女共によく売れる。

「仕事の神様」の言葉に宿る不変の考え方を学びたい気持ちが、この老若男女を問わない読者数に表れている。

「安心」を確認したい男たち、「実用性」重視の女たち。女性管理職の登用が叫ばれる日本で、男女がこれまで以上に理解しあう一助となればと願う。

(丸善 小板橋頼男)
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